土用と聞くとまずはじめに思い浮かぶのが「土用の丑の日」。うなぎを食べて厳しい夏を乗り越えようということから夏のイメージがあるかと思います。しかし、土用が年に4回あるということはあまり知られていません。また、土用の日は土いじりを伴う作業は避けるべきとされており、昔の人はお墓の建立や移設などをしませんでした。
「土用っていったい何のこと?」
「土用には葬儀や法事をしていいの?」
「土用にはお墓を建ててはいけないときいたことがあるけど、どうして?」
…などと、土用にまつわるさまざまな疑問をお持ちの方のために、
この記事では、土用について、さらには葬儀やお墓との関わりについて詳しく解説いたします。
土用とは
まずは、土用がどういったものなのかを解説いたします。
土用とは、年に4回ある雑節のうちのひとつです。期間は、四立(立夏・立秋・立冬・立春)の直前約18日間ずつで、たとえば2024年の土用は次のようになっています。
冬土用: 1月18日 (木) ~2月3日 (土)
春土用: 4月16日 (火) ~5月4日 (土)
夏土用: 7月19日 (金)~8月6日 (火)
秋土用: 10月20日 (日) ~11月6日 (水)
土用の風習は古来中国から伝わる「陰陽五行思想」に由来しているといわれています。
陰陽五行思想では、万物は木、火、土、金、水の5つの元素(五行)から成り立っていると考えており、1年を巡る四季も…
春は「木」
夏は「火」
秋は「金」
冬は「水」
というように「土」以外の元素がそれぞれの季節に割り当てられています。
そして「土」は、季節の変わり目である「立春」「立夏」「立秋」「立冬」の直前約18日の期間に割り当てられました。土の気が盛んになる時期と考えられ、動土・穴掘り等の土を犯す作業や殺生が忌まれたのです。
この時期のことを元々「土旺用事(どおうようじ)」と呼び、これが省略されて「土用」となっていきました。ちなみに「旺」の字は「盛んなさま」を意味します。
土用は土に触ってはいけない
以上のことから、土の気が盛んになる土用は、次のような土を触る作業を避けるようになりました。
土いじり
草むしり
柱立て
基礎工事
壁塗り
井戸掘り
そしてこれらに墓石工事も含まれるのです。
土用でも土を触ってよい2つのケース
年に4回も土用があると、その期間中は何もできなくて困ってしまいます。しかし土用でも土いじりが許されるケースがふたつあります。
土用に入る前の着工
土用に入る前に着工した農作業や土木工事は、それが土用期間中にかかってしまっても問題ないと言われています。
間日(かんじつ)
土用の期間中には、間日(かんじつ)と呼ばれる、土を動かしても大丈夫な日があります。この日は土を司る神様が天上に昇り土を離れるため、土いじりをしても良いと考えられています。ちなみに間日は次の日と定められています。
春土用:巳の日、丑の日、酉の日
夏土用:卯の日、辰の日、申の日
秋土用:未の日、酉の日、亥の日
冬土用:寅の日、卯の日、巳の日
土用にお墓の工事をしても大丈夫?
ここまでの説明に基づくと、土用のお墓工事は避けるべきでしょう。もしも工期的に無理が生じるのだとしても、土用になる前から着工すれば問題ないとされています。
最近はこうした雑節を気にしない人が増えており、土用にお墓工事を避ける人の方が少数派です。
しかし、もしも「気になる」のであれば、その直感に従って土用のお墓工事は避けましょう。そうした方が安心で、できあがったお墓に対して不安に思うこともありません。
土用に避けるべきこと
土いじり以外でも、土用には避けた方がよいとされていることがあります。
たとえば、新居の購入、転職、開業などは、避けた方がよいとする考えもあります。これは、土用の期間が一年の中でも季節が変化する時期であり、体調を崩しやすいからです。そのため、昔の人は土用の期間中に生活環境が変わるようなことを避けたのです。
また、土用の期間中は全方位に対して縁起がよくないとされていることから、引っ越しや両行なども避けた方がよいという考え方もあるようです。
土用に葬儀をしても大丈夫?
さて、ここまで土用について解説してきましたが、土用が「土」と関係していることがお分かりになったかと思います。
では、土用に葬儀をしても大丈夫なのでしょうか?
答えは、土用期間中の葬儀は問題ありません。葬儀と土いじりとはなんら関りがありません。
ただ、昔からの野辺送りの慣習に従って、葬儀当日に納骨をするケースが一部で見られます。もしも納骨を土いじりと考えて気になるようであれば、事前にお寺に相談して、納骨の時期を四十九日や百か日法要などにずらしてもらいましょう。
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この記事を書いた人
株式会社AZUMA代表取締役
ご葬儀は、故人から遺された方たちへの最後のあいさつの場であり、そして贈り物です。そこに集う人々がこころゆくまでお別れができる葬儀を常に探究。コラムやYouTubeなどでも葬儀に関する解説などを積極的に配信しています。