世界三大宗教のひとつに挙げられるイスラム教。信者数はキリスト教に次いで第2位で、18億人にものぼるといわれています。CNNによると、2050年までには27億6000万人にも及び、これは世界の人口の3分の1に至るそうです。
そんなイスラム教も、日本国内に目を向けてみると、イスラム教徒の数は約11万人と言われており、少数派です。それゆえ、日本ではイスラム教徒の葬儀に触れることはなかなかありません。
この記事では、イスラム教の葬儀の流れや特徴、日本で葬儀を行う際の注意すべき点をまとめました。
イスラム教の葬儀や死に対する考え方
死は通過点。イスラム教では、死を人生の終わりとは考えません。来世でよりよく生きるために、現世で神に忠実に生きる。死はあくまでも一時的なもので、アッラーの審判により、再びこの世に甦ると考えられています。
復活の日のために土葬が基本 火葬は厳禁
イスラム教の復活思想により、亡くなった人の遺体は土葬にします。火葬にしてしまうと、復活のための肉体がなくなってしまうため、ご法度とされています。
イスラム教では、死後速やかな土葬が望ましいとされているのですが、これが日本社会では2つの問題が生じます。
ひとつは、日本の法律では死後24時間以内は火葬や埋葬が禁じられているということ。もうひとつは、日本では99,99%の割合で火葬が行われ、土葬を受け入れる墓地が極端に少ないということです。
イスラム教徒にとって、死が次なる生への通過点であるならば、彼らの教義通りに死を迎えられないことは、生そのものをないがしろにしてしまうことに等しいと言えます。日本はイスラム教徒の望む葬送がとても困難な社会なのです。
ムスリムの葬儀は、ムスリムだけが参加する
葬儀は、イスラム共同体における「共同の責務」と考えられています。ムスリムコミュティの結びつきは強く、家族や親族だけでなく、同郷のムスリムや同じモスクに通うものも葬儀に参加します。これは、ムハンマドが語ったとされる次の言葉を大切に考えているからです。
「もし、ある人が亡くなって、その葬儀礼拝に100人のムスリムが参列すれば、彼らが全員で彼の為に取りなすので、その取りなしはアッラーに聞き届けられるだろう。」(サヒーフ・ムスリム)
ひとりのムスリムの死のために、たくさんのムスリムが協力して葬儀を執り行いますが、それはすなわち、非ムスリムは葬儀に参列できないことをも意味します。たとえ遺族や大切な友人であっても、その人が非ムスリムである以上、少し離れた場所から葬儀を見守ることしかできないのです。
イスラム教の葬儀の流れ
イスラム教徒の葬儀は次のような流れで行います。
- 死亡~搬送
病院などで息を引き取ると、速やかに葬儀社などに遺体搬送の手配をします。搬送先は最寄りのモスクです。
- 洗体・カファン
遺体がモスクに運ばれると、親族や地域のムスリムのボランティアで身体をきれいに洗浄します。その後、遺体を白い布で覆います。(カファン)
- 葬儀~速やかな埋葬
イスラム教徒は少しでも早く葬儀を済ませて土葬をしたいといいます。葬儀自体も数分で終わり、告別式もないと言われています。イスラム教の教義では、死後24時間以内に土葬をすることとなっていますが、日本の法律では実現不可能です。ですから少しでも早く埋葬できるように準備しておきます。国内には7カ所しか土葬可能なムスリム霊園がないのですが、そのいずれかに搬送しなければなりません。
- モスクでの葬儀
埋葬を終えて、近所で葬儀を行います。イスラム社会では数日間葬儀を行うようですが、日本ではそこまではできないようです。イスラム教では偶像崇拝を禁じているために、遺影を飾ることは有りません。また、審判の日による復活が信じられているため、墓参りの慣習はあっても年忌法要などはありません。
参列する場合の心得
さきほども触れましたが、ムスリムの葬儀に非ムスリムは原則的に参列できません。遠くから見守るだけの参列になるかもしれません。
また、イスラム教では「死」は天国へ行く準備期間のようなもので、泣いたり悲しんだりするのも好ましくないとされています。
イスラム教の信者ではない非ムスリム(異教徒)が葬儀に参列する際の服装は、喪服やダークスーツでよいでしょう。
香典の習慣はないので、持参しても遺族に断られることもあるようです。
参列する際の男女の違い
埋葬を終えると、モスクで葬式を行います。
ここでは異教徒も参列できるのですが、男女が同席するのにも、制約があります。
男女合同で礼拝をするのは葬儀の初日のみです。
男性は非ムスリムもモスクに入って礼拝をし、女性は遺族の判断によってモスク後方で遺族とともに礼拝するか、遺族宅でコーランなどを読んで過ごすことになります。
いかがでしたでしょうか。
もしもあなたがイスラム教のように日本人がなじみのない宗教の葬儀に参列する場合、失礼のないように下調べをしておく、あるいは宗教関係者に事前に確認しておくことが大切です。