お盆が近づくと、仏壇やお供え物と並んで、キュウリやナスに爪楊枝を刺した不思議なお供え物を目にすることがあります。それが「精霊馬」です。
「どうしてキュウリとナスなの?」
「精霊馬はどうやって作るの?」
「お盆が終わったあとの処分方法は?」
などなど、東京都三鷹市で59年にわたり、7万5千件のご葬儀をお手伝いしてきたAZUMA葬祭が、精霊馬とは何か、どのような意味が込められているのか、そしてその作り方や処分の方法まで、この記事で分かりやすくご紹介いたします。
精霊馬は、キュウリとナスで作られたご先祖様の乗り物
精霊馬とは、お盆にご先祖さまをお迎えし、そしてお見送りするための乗り物を模したお供え物のことです。仏壇や精霊棚(しょうりょうだな)に飾るのが一般的です。
夏野菜の代表であるキュウリとナスに、爪楊枝、割り箸、オガラなどを足として、動物のような形に見立てて作られます。
ちなみに「精霊馬」と呼ばれているものの、キュウリは「馬」、ナスは「牛」に例えられます。
キュウリ(=馬)は、足が速いため「ご先祖さまに早くわが家に来てほしい」という願いを込めて。ナス(=牛)は、歩みがゆっくりなことから「名残惜しく、ゆっくりあの世に帰ってほしい」という想いが込められているのです。
このように、精霊馬はただの飾りではなく、亡き人やご先祖さまへの敬意と感謝、そして再会と別れの心を表す、日本ならではの優しい風習なのです。
精霊馬の作り方
精霊馬の作り方はとてもシンプルです。ご家庭でも簡単に用意できます。
<材料>
- キュウリ(馬)
- ナス(牛)
- 爪楊枝や割り箸など(足に見立てます)
<手順>
- キュウリやナスに、4本の爪楊枝(または折った割り箸)を刺し、足のように立たせます。
- キュウリはせり上がった方を頭にすることで馬に見立て、ナスには牛のような重厚さを意識して飾ります。
- 向かって右にキュウリ、左にナス、それぞれ頭を内向きにして置きます。ご先祖さまを送り出す「送り盆」の日だけは、キュウリとナスを外向きにします。(置き方は諸説あり)
精霊馬の処分方法
お盆が終わったあと、精霊馬をどうすればよいのか迷う方も多いのではないでしょうか。
昔は「精霊流し」といって、川や海に流す風習がありましたが、現在では衛生や環境への配慮から、ほとんどの地域で行われなくなっています。
そのため現代では、塩で清めて、白い紙などで包み、家庭ごみとして処分するのが一般的です。
お下がりとして食べても構いませんが、夏場ですから野菜も傷みやすいので、無理のないようにしましょう。
ユニークな精霊馬も
最近では、SNSなどで「ユニークな精霊馬」が話題になることもあります。
キュウリやナスを用いて、さまざまな乗り物を精巧に作るのです。かつての乗り物は馬や牛でしたが、現代はバイクや車が一般的ですから、これらをご先祖様の乗り物に見立てるのは面白いですね。
さらには空軍で戦死してしまったおじいちゃんにと、キュウリとナスで戦闘機を作る人まで。
これらは決してふざけたものではありません。ご先祖さまの趣味や人生を大切に思い、心を込めてつくる時間そのものが、立派な供養になるのです。手を動かしながら故人を思い出し、家族で話しながら作る――それだけで、ご先祖さまとの深いつながりを感じることができます。
おわりに
精霊馬は、亡き人への想いをカタチにする、日本ならではの美しい風習です。
作る工程そのものが、ご先祖さまを思い出し、感謝を伝える尊い時間。派手である必要はありません。大切なのは、そこに込められた「想い」です。
お盆に向けて、今年はぜひ、ご家族で精霊馬を手作りしてみてはいかがでしょうか。
きっと、心あたたまるひとときになるはずです。
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