「神道(しんとう)」とは、神社を中心とした、日本の神々への信仰のことで、日本人の生活の中で培われた日本の民族宗教です。
一方、お盆は、一年間で一番盛り上がる死者供養、先祖祭祀の行事です。
仏教的要素の強いお盆ですが、神道でもお盆はあるのでしょうか。この記事では、神道のお盆についてご紹介いたします。
神道にも、お盆はある!
まずこの記事の問いに対して答えるならば、神道にもお盆はあります。
盆棚の飾り方は、若干神道独特の特徴がありますが、お盆の迎え方は一般的なものとほとんど変わりません。
盆棚の飾り方、そしてお盆の過ごし方について、ひとつずつ見ていきましょう。
神道の盆棚
神道の盆棚は、次のような形で用意します。
●盆棚と霊璽
神道では仏壇ではなく「祖霊舎」を設置し、その中に、ご先祖様の御霊の込められた「霊璽」を並べます(仏式の位牌のようなもの)。
お仏壇から位牌を出して盆棚に並べるのと同じように、神道のお盆でも盆棚を設置して、祖霊舎から出した霊璽を並べます。
●榊とお供え物
神道ではお花の代わりに榊をそなえます。また、お供え物は、三宝と呼ばれる神具の上に、水、酒、米、塩、その他に夏野菜や果物などを置いて並べます。牛と馬(ナスとキュウリ)をお供えしても構いません。
●盆提灯
神道でも盆棚の両脇には盆提灯を飾ります。縁側の軒先や玄関に吊るす風習も残っています。
●線香は不要
神道では、お線香やお焼香をしません。玉串(白い紙を垂らした榊)をお供えして二礼二拍手一礼をします。
神道の迎え火、送り火
神道のお盆も、8月13日から8月16日の4日間です。地域によっては7月や旧暦でお盆をするところもあるようです。
13日の夕方には、家に戻ってくるご先祖の霊が迷わないように家の前で「迎え火」を、16日の夕方には「送り火」を焚きます。
それぞれ玄関や軒先などで、おがら(麻の茎を乾燥させたもの)に火をつけます。そこから出た煙に乗って、ご先祖様がやって来て、帰っていくものと考えられています。
お墓参り
お盆の時期にお墓参りをするのも、仏教や神道とで違いはありません。
「ご先祖様がおうちに帰ってきてくれているのに、どうしてお墓参りするの?」と素朴な疑問を抱く方も多いでしょう。
そもそもお盆のお墓参りは、迎え火、送り火のために行われていました。
お墓で灯した火をたいまつや提灯に移して、家の盆提灯を灯したものを迎え火としていました。つまり、この火に乗って、ご先祖様がわが家に帰ってくると考えられていたのです。
送り火も同じで、家で灯されていた火をお墓に移すことで、ご先祖様をあちらの世界に送っていたのです。
お盆のお墓参りはお迎えとお送りのために行われており、その名残として、いまでもお盆にお墓参りが行われているのです。
家の守護神として子孫を守る存在
ここまで、神道のお盆の迎え方、過ごし方について解説してきましたが、神道は亡き人をどのように捉えているのかを解説いたします。
神道では、故人や先祖の御霊(みたま)はその家の守護神となり、子孫を守るといわれています。
仏教の法事が、一周忌、三回忌、七回忌と続けて三十三回忌まで行うように、神道でも一年祭、二年祭、五年祭、十年祭と続けて五十年祭まで行なわれます。
長い時間をかけて、その家の守り神となり、最終的には、その家の祖先から、地域全体の氏神さまに昇華していくのです。
いずれにせよ、仏教のように、どこか遠くの極楽浄土に往生するとか、キリスト教のように神の世界に帰るなどの考えではなく、神道ではご先祖様はいつも私たちを見守ってくれています。
それはつまり、生者と死者(祖先)とのつながりは日常的に行われていたことを意味します。
日本人は、日々ご先祖様とともに暮らしていますが、その中でも特に、盆と正月は、ご先祖様と盛大につながる日と捉えられ、人々は神社にお参りし、お墓参りをし、家に祖先を招いていたようです。
「お盆」は日本の伝統行事
日本では、仏教が伝来してからというものの、死者供養は仏教が担ってきたという歴史があります。そのため、お盆行事は仏教のものと思われがちですが、そもそも、仏教や神道と区別される前から、伝統行事としてお盆が人々の間で行われてきたということです。
神社本庁も、公式サイトの中で「正月や盆など祖先の霊は年中いく度も子孫のもとを訪れます。正月棚や盆棚(先祖棚)はその際に祖先を迎える場所で、神棚や御霊舎みたまやの原型とも考えられています」と示しています。
仏教、神道関係なく、私たちのルーツである古いご先祖様とのつながり、そして家族のつながりの大切さに気づかせてくれるのが、お盆です。
神道では、故人が亡くなってから迎える初めてのお盆を「新盆祭・新御霊祭(あらみたままつり)と呼びます。
御霊が家族や子孫を守る祖霊となり、御霊の安定を祈るための大切な行事と位置付けています。
お盆では、普段なかなかできない感謝の気持ちをこめて、故人をしっかり供養するようにしましょう。
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