昨今、さまざまな場所で見られるようになってきた家族葬ですが、お寺の檀家に属している場合も家族葬の実施は可能なのでしょうか。
「檀家にはそのお寺特有の決まりごとがあるのでは?」
「他の檀家や近隣の人たちも呼ばなくてはいけない?」
などと不安に思われている方は、どうぞ最後まで読み進めてみて下さい。
檀家であっても家族葬は「可能」
まず結論から言うと、檀家であっても家族葬は可能です。
最近では都心部だけでなく、地方や郊外でも家族葬が当たり前ですから、それを「NO」というお寺は皆無でしょう。
家族葬とは、家族や親族を中心に執り行う小規模なお葬式のことです。ただし、菩提寺の役割はその家の祖先や死者を供養するのが仕事であるため、葬儀にどれくらいの人を招くか、その規模にまで口を挟んでくることはありません。
ですから、お寺の檀家だとしても安心して住職に「家族葬でしようと思っていますので、よろしくお願いいたします」と伝えましょう。
地域のしきたりに従わなければならないことも
もしもそのお寺や地域の慣例として、檀家や隣近所も葬儀に参列するしきたりがあれば、それに従わなければならないこともあるでしょう。
かつてお寺が地域コミュニティの中心であり、現在もその伝統を保持している場所が多くあります。こうしたところでは、お寺とのつながりがそのまま地域の人たちとのつながりに直結します。そうした場合に、地域独特の慣習やしきたりというものを無視できない状況が出てきます。
たとえば、
「必ず回覧板で訃報を回す」
「隣組の家々が受付や会計のお手伝いをする」
…などといったものです。
最近は家族葬が増えてきており、社会全体もそれを容認するのが当たり前になっています。
その上で判断に迷ったときはお寺の住職に相談してみましょう。
直葬や一日葬の場合はこればかりではない
家族葬と並んで最近多くなってきたのが、火葬だけを執り行う「直葬」、さらには通夜を省略する「一日葬」などです。こうした葬儀スタイルは本来あるべき形を省略しているため、お寺によっては苦言を呈される、あるいは何らかの形を提案されるかもしれません。
家族葬という用語は実にあいまいで、参列者の規模を指しているに過ぎません。ですから家族葬も、より具体的に見ると…
家族葬として、2日間葬儀を行う
家族葬として、1日だけで葬儀を行う(一日葬)
家族葬として、火葬だけを行う(直葬)
…という風に分類されます。
葬儀を2日間行うか、一日葬にするか、直葬にするか、これを決めるのは家族の自由です。しかし、供養の儀式を営む僧侶からすると、家族が決めたスタイルの中で、宗教的な儀式をしなければなりません。
僧侶の仕事は、その宗派の儀礼に則って、きちんと故人さまを浄土に送り出すことです。宗派が定める儀礼には、一定の形式があり、それなりの時間を必要とします。
例えば、直葬では火葬炉前での読経が通常10分程度に制限されることがあります。一日葬では当然のことながら通夜で読み上げるべきお経があげられません。つまり、お寺側からすると十分に供養ができないのです。
もちろん、遺族の意向に即して、柔軟に対応してくれるお寺がほとんどですが、中には、「大切なお檀家さんの葬儀だから、伝統的な方法できちんと行わなければ」と考える人もいます。こうした時に、家族は直葬を望んでいるけれど、僧侶側は最低限の式典は行うべきだと、意見の不一致が生じます。
解決策はただ一つで、菩提寺と話し合うことです。どうして一日葬や直葬を希望しているのかをきちとん菩提寺に話すことで、多くのお寺は理解を示してくれます。また、菩提寺と深く話をすることで、どうして供養が必要なのかといった話を聞けることもできるかもしれません。
また、葬儀とは別の機会として供養の場を設けることもあります。たとえばご遺体が自宅に安置しているのであれば、直葬や一日葬に先立って僧侶が自宅まで出向いてしっかりと読経する。また直葬の場合は、お骨になったあとにお寺の本堂でお経をあげるなど。
このあたりは菩提寺としっかり相談しながら、お互いが納得できる形で葬儀を進めていきましょう。
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この記事を書いた人
株式会社AZUMA代表取締役
ご葬儀は、故人から遺された方たちへの最後のあいさつの場であり、そして贈り物です。そこに集う人々がこころゆくまでお別れができる葬儀を常に探究。コラムやYouTubeなどでも葬儀に関する解説などを積極的に配信しています。