新型コロナウイルスに感染された方のご遺体の葬儀はどのように執り行えば良いのでしょうか。この記事では、2020年5月13日現在の、逝去から火葬までの実際を記してまいります。
決定的な対応策がない
新型コロナウイルス感染者の葬儀は、正直われわれ葬儀社もその対応に苦慮しています。
「感染症の予防及び感染症の患者に対する医療に関する法律第30条第3項」により、通常は禁止されている24時間以内の火葬ができるものの、その他のさまざまな判断は現場レベルに委ねられています。国が掲げている指針は次の2つです。わかりやすくまとめます。
- 感染拡大防止のため、24時間以内の火葬を認める。ただし必須ではなく、出来る限り遺族の意向などを尊重すべき。
- 遺体からの感染を防ぐため、全体を覆う非透過性納体袋に収容・密封することが望ましい。また、手袋や防護服を着用する。
悩む現場 病院・葬儀社・遺族
ひとつひとつの案件を現場レベルで判断しなければならず、対応にはばらつきが見えます。通常病院には出入りの葬儀社があり、遺族が指定する業者がなければこうした出入り業者が遺体の搬送を請け負います。
しかし、指定業者ですら新型コロナウイルスに感染したご遺体の搬送を拒んだという事例も耳にするほどです。
葬儀社であるわれわれも、ご遺体の取り扱いとご遺族の心のケアに頭を悩ませているのが正直なところです。
多くの場合、ご遺体は病院内で速やかに納体袋に納められて24時間以内の火葬を目指します。最後の面会もできず、火葬の立会いもできない場合もあるため、ご遺族の心痛は察するにあまりあります。
搬送時の留意点
ご遺体の搬送時には、とにかく「個人防護」と「ご遺体のケア」に努めます。病院や葬儀社スタッフは、マスク、手袋、防護ガウンなどで感染を徹底的に予防します。
そして、納体袋に納めたあとにドライアイス処置を行い、遺体の腐敗を防ぎます。適切な個人防護と消毒などを行えば、安全に搬送できるものとされています。
新型コロナウイルス感染の「疑い」の場合
死亡診断書に記載される直接の死因が「新型コロナウイルス感染症(COVID-19)」ではなく、他の死因(心不全など)との記載が有り、その要因に「コロナ感染症の疑い」とあった場合には、PCR検査が必要となるため、死亡診断書を提出するタイミングに苦慮します。
検査結果が出るまで3~4日間かかり、もしも結果が「陰性」と判断された際に、ご遺族が普通の葬儀を行いたいと申し出る事が考えられるからです。
基本的な対応としては、通常のご遺体に行うようにドライアイスを適切に当てて、遺体の腐敗の進行を止めます。そして検査結果を受けてから葬儀実施の有無を決めていきます。
ご遺族とのやりとり
われわれ葬儀社にとっても、濃厚接触者になりうるご家族との接触が、感染の最大のリスクであることは正直否めません。
大変心苦しいのですが、葬儀に関するあらゆる説明(流れ、注意点、見積書、請求書など)は電話・メール・郵送などで対応し、極力接触の機会を持たないようにするよう努めております。通常は契約書にいただく署名捺印などを省く場合もあります。
感染拡大防止と遺族の心のケア。この両面をどう手厚くサポートしていくかが、われわれ葬儀社の課題です。