棺とは、遺体を納めるためのもので、お葬式の現場ではなくてはならないものです。故人様に休んでいただき、共に火葬炉の中に入っていく、まさに「最後の場所」と言えるでしょう。
この記事では、知っているようでなかなか知らないであろう棺について、材質、種類、費用さらにはその中に納める副葬品についても詳しく解説いたします。
棺の材質
棺がどういうものかは、みなさんもある程度想像ができることでしょう。しかし、世界を見渡すと棺にもさまざまな材質があることはあまり知られていません。
現在日本で使用されている多くの棺は木棺、つまり木でできた棺ですが、この他にも、陶棺(とうかん:陶製の棺)や石棺(せっかん:石製の棺)、金属製の棺などもあります。
いまでこそ私たちは、「棺は故人様と一緒に火葬されるものだから木製だ」という風に考えますが、埋葬方法の違いによって棺にもさまざまな種類があります。
たとえば、古代エジプトやギリシア・ローマに多く見られたのが石棺です。これは、現代でいう棺というよりは、石で囲まれた空間と呼んだ方が適切です。日本のかつての古墳の中にも石棺があり、そこにご遺体を横たわらせました。「石室」とも呼ばれ、現在でもお墓の中で遺骨を納骨する部分を「石棺」と呼ぶほどです。
また、最近でも地球環境や低予算化のために、段ボールを素材とした棺も登場しています。
棺の種類
いまの日本は火葬が主流なので、木棺が一般的です。そして棺も主に木の棺と布張棺の2つに分けられます。
木の棺は大変厳かな雰囲気をかもし出します。檜(ヒノキ)や樅(モミ)や桐(キリ)などが選ばれ、高級品になると棺の天面や側面に立派な彫刻が施されます。
一方の布張棺は、木の棺の表面にきれいな柄や文様が施され、華やかな印象を与えます。
以下、棺の種類について解説していきます。
●木棺
桐や檜の木でできた棺です。シンプルなものから、角に金具がついたもの、細かい彫刻の施されたものまでさまざまです。彫刻も左右の2面、蓋も含めた3面、天地にも施す5面などから選ぶことができます。また、割れや節目がない一枚板の「むく板」だけで作りあげたものは大変高価ですが、上品さが際立ちます。
●布張棺
昨今最も人気のある布張棺は、温もりや柔らかさを印象づけるモダンな棺です。色は白、ピンク、青、緑、紫などから、故人様らしいものを選べます。地紋には華やかな花柄があしらわれており、花祭壇にも調和がとれます。
●エンバー棺
通常の棺は顔の部分の小窓を開いて故人様の表情を拝みますが、エンバー棺は、蓋の上半分を外すことができるため、故人様の胸元あたりまで見れます。また、透明のアクリル板で覆われているので衛生的にも安心です。
棺の値段
ほとんどの葬儀社が葬儀プランの中に棺も組み込んでいるため、棺単体の値段を知る機会はそうありません。
棺の値段は実にさまざまで、シンプルな桐棺や布張棺は数万円から、以降、数十万円や大変高価なものは100万円を超えるものもあります。
副葬品
棺の中に納める物のことを副葬品(ふくそうひん)と呼びます。副葬品は古来より世界中で納められ、死者と一緒に物品を埋葬しました。昔の人たちはへその緒や配偶者の髪の毛、着物や人形などを入れていたそうです。
また世界に目を向けても、権力者の埋葬地からは財宝が見つかると言います。死後も権勢を振るいたいと考えたのでしょう。
お花も副葬品の一種です。約10万年前のネアンデルタール人は仲間の死に際して花を手向けたと言われています。いまの日本の葬儀でも、出棺前に棺の中にお花を納めます。いっぱいにします。ある意味お花こそが、最もポピュラーな副葬品なのかもしれません。
棺の中に入れてはいいものといけないもの
副葬品は、原則可燃のものに限ります。燃えないものは棺に納めてはいけません。それは、次の4つの理由によります。
〇公害の原因:ビニール製品、化繊の衣類、発泡スチロール、CDなど
〇遺骨を汚す:カン、ビン、ガラス製品など
〇火葬炉の故障の原因:テニスラケット、釣り竿、ゴルフクラブなどのカーボン製品、心臓のペースメーカーなど
〇燃えにくいもの:大きなぬいぐるみ、辞書などの書籍など
副葬品のパターン
副葬品にもさまざまなパターンがあります。
【故人への想いを表現】
ある人は故人様へのお手紙を納めます。またある人は記念写真を納めて故人様と自分との思い出をあちらの世界に届けようとします。また、折り鶴を納めて故人の冥福を祈ろうとする人もいます。
【故人が好きだったもの】
故人の好物や、愛用していたものなどを納めることで、あの世で寂しい想いをしている故人の気持ちに寄り添うことができます。
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