通夜と葬儀を終えたあとも、故人を供養する仏事は続いていきます。
四十九日法要、百か日法要、一周忌法要、そのあとも三回忌法要、七回忌法要、十三回忌法要、続き、三十三回忌法要まで、定期的に家族や親族が集まって故人や先祖を偲びます。
通夜や葬儀では喪服を着用しますが、では、法事の時の服装はどのようにすればいいのでしょうか。
この記事では、法事の服装について解説いたします。
喪服は三回忌まで 七回忌からは平服で
法事の服装に決まりはありません。
三十三回忌までずっと黒の喪服でも、全く問題はありません。
ただし、一般的に黒の喪服に身を包むのは三回忌までと言われています。
これは、四十九日法要、一周忌法要、三回忌法要は、家族だけでなく親族も招いて一族の儀式として行うからです。
ところが、7回忌法要あたりからは家族だけで行う家が増えているようです。
家族だけで行うということは、それだけ改まった儀式ではなくアットホームになることを意味します。
ですから、このあたりか服装を平服に変えていくようです。
喪服は三回忌まで、七回忌からは平服で、の理由
ではなぜ、法事の服装の切り替えは、三回忌と七回忌なのでしょうか。
これは、法事の意味合いを理解すれば、すぐに納得できることかと思います。
●喪服は、喪に服していることを表している
喪服というのは、「喪に服す」ための衣服です。
黒い服に身を包むことで、「私は故人の死を悲しんでいます」「遺族の悲しみに寄り添って身を慎みます」という具合に、今その人が置かれている立場や心理状態が無言のメッセージとして周りの人たちに伝える役割があります。
喪中の期間も諸説ありますが、社会通念上、49日、あるいは1年などでしょう。
しかし、49日ないし1年で、死別の悲しみがピタッとなくなるのかというと、そういうものでもありません。
故人との死別の悲しみを乗り越えられる期間として、三回忌から七回忌の間と考えられたのでしょう。
●中国では、三回忌を「大祥忌」と呼ぶ
四十九日までの中陰法要や、その後の年忌法要の起源は古代のインドや中国に見られます。
中国では四十九日法要のことを「大練忌」と呼びます。
未練が大練になる。つまり、死者の悲しみを乗り越えることを意味します。
四十九日法要の次にやってくる百か日法要は「卒哭忌」と呼びます。
「哭」は「泣く」ですから、泣くのをやめることを意味します。
そして、一周忌法要を「小祥忌」、三回忌法要を「大祥忌」と呼びます。
「祥」の字は「幸」の意味ですから、死別の悲しみを乗り越えて、法要に家族が集まることをおめでたいこと、よろこばしいこととしています。
こうして、身内の死ははじめこそは不幸なのですが、時間の経過、そして区切り区切りの法要を経ることで、よろこびへと転化していくさまが描かれています。
●平服を着用するということは、故人の死が日常に溶け込んでいったことを意味する
中国の忌日の呼び方を見るまでもなく、わたしたちは時間をかけて故人との死別の悲しみを乗り越えていきます。
「いつまで悲しんで、いつからは喜べ」という風に明確な線引きはできません。
ただし、三回忌を終えて、七回忌を迎えるあたりで、わたしたちは故人の死を受け入れることができるのかもしれません。
喪服は、喪に服していることを表す衣服です。
平服で法要を行うということは、それだけわたしたちが、故人の死を受け入れ、乗り越え、新たな日常を生きていることを意味するのではないのでしょうか。
相手を不愉快にさせない衣服を心がけよう
もちろん、喪服にはこうした、宗教的、心情的な意味ばかりがこめられているわけではありません。
一番はじめにも申し上げたように、喪服には明確な決まりがありません。
何回忌までが喪服、何回忌からは平服というのも、あくまでも一般的な慣例の中で語られていることです。
地域性、寺院や親族の考え方によってもさまざまでしょう。
だからこそ、喪服の持つ意味合いやメッセージをまずは考えて、その上でTPOに合わせましょう。
施主や家族の人に聞いて、もしもその人たちが喪服を着用するのであれば、それに合わせておく方が無難でしょう。
また、「迷ったら喪服」と考えていてもよいでしょう。
法事の場に置いて喪服は正しい服装なので、相手に対して改まりすぎることはあっても、決して失礼には当たりません。
平服ってどんな服装?
ここまで当たり前のように「平服、平服」と述べてきましたが、では平服とはどのような服装なのでしょうか。
普段着のジーパンやTシャツなどというのはさすがにはばかれるでしょう。
どんなに家族だけが集まる法事とはいえ、寺院を招いて読経をいただき、きちんと供養をしてもらう場ですので、くだけすぎた服装は避けましょう。
男性であれば、ダークスーツにシャツ、派手でないネクタイなどがよいでしょう。
女性であれば、紺やグレーやブラックなどのアンサンブルやスーツがよいとされています。
また、男女ともに、状況によってはもう少しラフな服装でも構いませんが、色合いや柄などには気をつけましょう。
法事はあくまでも亡くなった人を偲ぶための儀式ですから、個性を出しすぎず、地味目な服装が望ましいです。