散骨とは、海や山や川などに、粉末状にした遺骨を撒いて供養する葬法です。お墓を不要とすることから注目を集めていますが、実施率は全体の1%にも満たないと言われています。あまり一般的ではないかもしれませんが、故人が散骨を望んだ場合を考え、事前に知識を知っておくのも大切なことかもしれません。
ここでは散骨についての、注意点や正しい方法についてご紹介します。
散骨に関する法律は明確ではない
日本では、散骨は違法ではありません。
「違法ではありません」とはなんとも妙な表現です。なぜ、「合法です」と言わないのでしょうか。それはつまり、合法というわけでもないからです。
現在の日本では、散骨を取り締まる法律がありません。法律がない以上、違法として取り締まることができないのです。決して合法として認められているわけでない散骨は、極めてグレーゾーンの中で行われているのです。要は、解釈次第、ということです。
市区町村の判断で設けられた条例やガイドライン
しかし、地域住民や漁業関係者から風評被害への反発もあり、市区町村単位で条例により規制している場合があるので、どこでも散骨ができるわけではありません。
北海道長沼町では、散骨を進める団体と周辺住民との間にトラブルが起こり、これをきっかけに2005年に『長沼町さわやか環境づくり条例』が設けられました。条文の中には「何人も、墓地以外の場所で焼骨を散布してはならない」あり、違反者は6ヶ月以下の懲役又は10万円以下の罰金に処されます。
死体遺棄罪の可能性
散骨の原則は、遺骨を粉末状に細かく砕いた上で撒くということです。
もしも遺骨をそのままの状態で撒いてしまうと、「遺骨」を「遺棄」したとみなされ「死体遺棄罪」に触れてしまう可能性があります。
そのため必ず事前に遺骨を砕いて粉末にしておきましょう。
「節度を持って」周りに配慮しながら行いましょう。
散骨する場所は条例を確認すること
散骨を避けるべきなのは、海水浴場・漁場・養殖場など人が多く集まる場所や周りとトラブルになりそうな場所です。
個人で行う場合には地区の条例などを確認することが大切です。
散骨業者に依頼して、漁場と離れている「漁業権のない海域」で行うのが安心でしょう。
散骨は業者に依頼するのが望ましい
散骨は個人でもできますが、業者に依頼するのが安心です。
最近では、日本全国さまざまな地域に散骨業者があります。
また、そのほとんどは海での散骨、つまり海洋散骨を実施しており、陸地での散骨はあまり見られません。
これは、海の方が周囲とのトラブルになりにくいからだと思われます。
海洋散骨には、主に次の3つのプランがあります。
- 個別散骨
個別散骨とは、ひとつの家族が船をチャーターして沖合で散骨するプランです。周囲の人の目を気にせずに自分たちだけで散骨を行えます。費用相場は20万円〜40万円です。
- 合同散骨
合同散骨とは、複数の家族が一緒にひとつの船に乗り合わせて、沖合で散骨するプランです。
個別散骨よりも安い費用で執り行えます。費用相場は10~20万円です。
- 委託散骨
委託散骨とは、家族が散骨に立ちあわずに業者に遺骨を預けて散骨を委託するプランです。日よ相場は5万円~10万円です。
散骨の流れ
散骨を実施するまでには次のような流れで進めて行きます。
- 散骨業者の決定
まずは散骨を依頼する業者を決めます。インターネット検索から気になる業者に連絡を取って決めましょう。
- 粉骨する
遺骨を粉末状にすることを粉骨と呼びます。
粉骨は、散骨業者が行ってくれることもありますし、粉骨をしてくれる専門業者にも依頼できます。最近ではインターネット上で自分の手で粉骨する専用キットも販売されています。
- 喪服は着用しない
散骨当日は、業者が指定する港に集合します。
散骨の現場では、基本喪服は着用しません。港付近にはさまざまな人の行き交いがあり、周囲に散骨であることが知れてしまう可能性があるためです。
散骨は、いまでも市民権があるとはいいがたいのが現状で、近隣の海に散骨することを良くなく思っている人も多くいるかもしれません。そのため、散骨業者は平服での散骨を勧めており、あくまでもクルージングとして出航しています。
また、船の上は大変揺れます。動きやすく、体に負担の少ない格好で散骨に臨みましょう。
- スポットに到着 散骨を実施する
海では、海水浴やサーフィンなどを楽しむ人もいますし、釣りをする人もいます。さらには漁業を営んで生計を立てている人もいるために、近海で執り行うことはあまりありません。
状況にもよりますが、通常、港から約30分程度離れた沖合にまで出て、散骨スポットを探します。
スポットに到着すると、粉状にした遺骨を撒きます。その後、お供えとしてお花やお酒を撒くこともあります。
もしも宗教者による立ち合いを希望するのであれば、その場で読経やお祈りをしてもらえるでしょう。
散骨の正しいやり方
散骨に関しては明確な法規制はありません。しかし1991年に法務省は「葬送を目的として、故人が節度を持って行う分には遺棄罪にならない」という見解(非公式)を示しており、いま現在もこの見解が散骨実施の際の判断基準となっています。
「節度を持って」「周りに配慮し」「目立たないように行う」ことが大切なのです。
近年、新しい供養の形として認められつつある散骨ですが、遺族の中には難色を示すこともあるようです。
故人の遺志に沿うためにも親族でよく話し合い、穏やかな気持ちでお見送りしたいものです。