「大往生」ということばを聞きますが、これはいったいどういう意味なのでしょうか。また、何歳からを「大往生」と呼ぶのでしょうか。
この記事では、「大往生」ということばについて考えてみたいと思います。
永六輔さんの『大往生』
「大往生」ということばは、もともとは1994年に放送作家の永六輔さんが放った大ベストセラー(岩波新書)のタイトルです。2018年12月時点では累計246万部も発行されているそうです。
全国をくまなく旅してまわったという永六輔さん。その中で市井の人々から聞いた死や病にまつわることばをまとめた、いわゆる無名の人たちの語録は、発売とともに爆発的な勢いで売れていきます。大ヒットの理由は、永六輔さんの人気に加え、高齢化社会がより加速する中で、同じ目線の市井の人たちのことばに共感した人が多かったことが挙げられます。
大往生とは、年齢よりも逝き方
大往生に明確な定義はありません。しいて大往生の定義を考えてみますと…
適度な長寿であること(80~90歳?)
大きな病気もけがもなく、苦しまずに亡くなっていく
亡くなる方も送り出す方も、納得いく形で死を迎えられる
…などが考えられます。
ですから、大往生というのは年齢のことではなく、むしろその方がどのように息を引き取るかという逝き方を指すものと言えるでしょう。
往生とは、極楽浄土に生まれ変わること
ちなみに「往生」とは、極楽浄土に生まれ変わることを意味します。
極楽浄土とは、阿弥陀如来が作られたと言われる仏さまの住まう場所。浄土教(日本では浄土宗や浄土真宗など)の教えでは、阿弥陀如来の力を信じて、「南無阿弥陀仏」の念仏を称える人は、必ず阿弥陀如来が救って下さり、極楽浄土まで連れて行ってもらい、仏として生まれ変わるとされています。これが極楽往生です。
浄土信仰は、家の宗派関係なく、日本人の中に深くしみこんだ死生観です。「亡くなったら浄土に行きたい」という素朴な信仰に、永六輔さんは「大」の字を付けたわけです。とても秀逸なタイトルだと思います。
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