自身の意志を遺しておく方法に、エンディングノートと遺言書がありますが、これらにはどのような違いがあるのでしょうか。
ここではエンディングノートと遺言書の違いについて詳しくお伝えします。
終活を通じて注目されるエンディングノートと遺言書
最近は「終活」という言葉が広く浸透して、ブームというよりもすでに定着した感があります。
だれにでも人生の終わりはやってきます。
終活をする理由にはさまざまなものがあります。
自分自身の最期を自らデザインしたいと考える人もいれば、子どもなどの遺された家族に迷惑をかけたくないと思う人もいます。また、少子高齢化に伴い自身の葬儀や死後を託す相手がいない「おひとり様」の増加も、終活が普及する要因に挙げられます。
何かあったときに自分も周りも困らないように、葬儀や供養の希望、相続、荷物の整理なども含めて、元気なうちにできる時に準備しておきましょう。
そして、そのために有用なツールがエンディングノートなのです。
「エンディングノート」に法的な効力はない
終活を円滑に行い、自らの最期を演出するためのツールとして手軽に用いられているのがエンディングノートです。
書店や文具店で購入することもできますし、自分が使いやすい形のノートでもかまいません。
また、自分自身の意志を言語化、文章化して遺しておくものとして、遺言書があります。
エンディングノートと遺言書。一番の違いは、「エンディングノートには法的な効力はない」、ということです。
エンディングノートはあくまでも私的な記録、希望として残しておくものと言えます。
一方、遺言書には法的効力があるため、相続の仕方などにも言及ができます。
あくまでも自分の希望を伝えるのがエンディングノート。自分の意志や想いを死後も影響を与えられるのが遺言書です。
エンディングノートと遺言書 さまざまな違い
法的効力のある遺言書とエンディングノートとではさまざまな違いがあります。
●エンディングノートは自由に書けるが、遺言書には書き方に決まりがある
●エンディングノートは、いつ中身を確認してもよいが、遺言書は家庭裁判所で検認してもらわなければならない
●エンディングノートは安い費用で作成できるが、遺言書の作成(公正証書遺言)には高い費用がかかる
「エンディングノート」に書く内容
エンディングノートには、自分の希望や人生の記録、次世代の方に伝えたいことなどを、自分なりの方法で気軽に記入します。
自分自身の経歴(名前や生年月日、職歴・病歴など)
●家族や親せき、交友関係など
●財産関係
●終末期の治療などに関する要望など
●葬儀やお墓に対する希望
●残された家族が行うべき手続き
●家族へのメッセージ
●遺影データ など
気持ちが変わったり、保有財産や内容が変わったりした場合はいつでも書き直しができます。
個人情報でもありますので、大切に保管しておき、身近な数人にはノートの存在と保管場所を口頭で伝えておきます。
遺言書は不要という方もエンディングノートは書いておくことをお勧めします。
万一の時に連絡してほしい人のリストなどがあると、家族に役立つでしょう。
実施率はわずか2% エンディングノートの注意点
エンディングノートは多くの人に知られ、さまざまな企業や組織が販売しています。中には無料配布や無料ダウンロードで提供するところがあるほどです。
しかし、手に入れたはいいが、実際に書きこんで活用している人はわずか2%だと言われています。
元気なうちは、死や死後について考えづらい。書かなければならないことがたくさんあり、すべてを埋めようとして挫折をしてしまう、などが主な理由なようです。
とにかくエンディングノートはすべてを埋めようとはせず、気楽に、正直に書くことをおすすめします。そして、定期的に見直して、修正していきましょう。
遺言書(ゆいごんしょ)(法的な効力を持たせることができる)
エンディングノートは私的なものですが、法的に効力を持つものに遺言書があります。
財産が多い、受け取る人が多いといった場合は、司法書士や弁護士、税理士など専門職に相談して作成しておくとよいでしょう。
◇公正証書遺言(法的効力を持つ)
15歳以上ならだれでも作ることができます。
公証役場の公証人の面前で証人2人の立ち合いのもと、遺言者が口述した内容を、公証人が遺言書として文章化した遺言のことです。
◇自筆証書遺言
遺言者が、遺言の内容の全文を自書で作成する遺言書です。
形式や内容に不備がある場合、遺言書が無効になる可能性があります。
◇秘密証書遺言
遺言者が遺言の内容を記載した書面に押印したうえで封じ、公証人がその封紙上に日付及び遺言者の申述を記載して作成します。
記載内容に不備がある可能性が残ります。
このように、自分の人生の最期に向けて前向きな気持ちで準備を行う活動が「終活」ですが、最近では終活コンサルタントといった終活をサポートしてくれるサービスもあります。
年齢にかかわらず、健康で気持ちに余裕があるうちに「終活」を考えてはいかがでしょうか。
自分の人生がよりよいものになるはずです。