「永代供養(えいたいくよう)」という言葉を聞いたことはありますか?
近頃ではお墓のあり方や供養の方法も多様になってきました。
これまで先祖代々受け継がれてきたお墓とは異なるタイプの「永代供養」とはどういった意味なのでしょうか。
「永代供養」とは
永代供養とは、墓地を相続する家族や親族が絶えてしまった場合などに、寺院や墓地の管理者が一定期間、供養をしてくれる契約システムを指します。
「永代」という文字から、永久に供養してもらえるイメージを持つかもしれませんが、永久ではなく一定の期間が定められています。
供養の期間は三十三回忌までとするところが多いようですが、十七回忌まで、五十回忌までという期限を設けているところもあるようですので、事前の確認が必要です。
「永代供養」が増えてきた理由
永代供養はそのものは昔からありました。檀家の中で家の途絶えたところの先祖の供養を菩提寺が引き受けたのです。
しかし最近は、少子高齢化や核家族化などを理由に、子や孫が親と一緒に暮さない人が増えたため、お骨をお墓の中に入れて守っていこうとする人が減っています。そうした理由から、お寺の永代供養が選ばれているのです。
「永代供養」の方法
具体的な永代供養の方法としてはいくつかあるようです。
どの方法が望ましいか、家族や親族とよく話し合うことが大切です。
1.単独の墓に埋葬され、規定の年数が完了した後に墓石を撤去し合同(共同)の納骨堂などに納められるもの
2.一つの集合墓の中に複数の骨壺が納骨され、規定の年数が完了した後に合同(共同)の納骨堂などに納められるもの
3.ほかの人の遺骨と分けることなく、最初から合同墓地に一緒に合祀、埋葬されるもの
ここで注意すべきことは、合同で埋葬(合祀)される場合です。
後になって遺骨を取り出したりお墓を引っ越したりすることはできなくなるため、よく話し合って決める必要があります。
永代供養を前提としたさまざまな墓
従来のお墓は、子や孫が受け継ぐものとされていましたが、時代の流れによって、お墓を受け継がない世帯が増えています。
しかし「自分が元気なうちは手を合わす場所を持っておきたい」と考える人が多いのも事実です。
こうした利用者のニーズに合わせて、永代供養を前提として、将来的に墓じまいの必要のないお墓が人気です。
具体的には次に挙げる3つのものが選ばれています。
●納骨堂
納骨堂とは、納骨壇と呼ばれる納骨施設を備えた建物のことです。「屋内型のお墓」と思えばよいでしょう。ただそこで並べられるのは墓石ではなく、納骨壇。ロッカー型、仏壇型、自動搬送型など、さまざまな種類があり、費用もそれぞれ異なります。建物の中でお参りするので、天候に左右されない、お墓掃除をしなくてもよいなどの理由もあり、人気です。永代にわたり利用でき、あととりやお参りの人がいなくなったら、遺骨は合祀され、供養は寺院が執り行ってくれます。
●樹木葬
樹木葬とは、樹木を墓標としたお墓のことです。納骨はカロートの中に納め、礼拝を樹木に向かって行う、というスタイルが一般的なようです。一般的なお墓と同じで、個別区画と共同利用の2通りがあります。前者は、個別の区画を設けてその中に遺骨を埋葬し、おのおの樹木や草花を植栽します。後者は集合墓のように大きなシンボルツリーに手を合わせ、その周辺に作られたカロートに納骨します。いずれにせよ、墓石の解体撤去のように手間と費用がかからないため、お寺としてもリスクが低く、永代供養を前提として売り出されています。
●永代供養付き墓石
墓石の利用を期限付きにするお寺や霊園もちらほら見られ始めました。契約内容が墓じまいを前提としたもの、使いまわしのできる墓石の利用などがあります。一定期間を過ぎると契約の更新ができ、更新されない場合は遺骨は合祀されます。
費用は埋葬方法などによって異なる
費用は前述のように、供養の期間や埋葬方法によって異なります。
単独の墓よりも集合墓地の方が、さらに、集合墓地よりも合同墓地の方が費用は低くなります。
納骨堂の場合は、自動搬送型>仏壇型>ロッカー型、といった具合で、設備が大がかりなほど高い傾向にあります。
家族のあり方や家族全体の意志を確認しながら、よく検討するようにしましょう。
永代供養のよいところ
少子高齢化や核家族化など、これまでとは違ったライフスタイルや生活様式の多様化が進んだことで、あらかじめ永代供養を希望する方が増えてきたようです。
それに永代供養を申し込んだからといって、お参りができなくなるわけではありません。
集合墓地や合同墓地でも、単独のお墓と同じようにお墓参りは自由にすることができるのです。
永代供養であれば将来何らかの理由でお墓の維持が難しくなった場合でも、無縁仏になってしまう心配がありません。
お墓には大切なご先祖様が眠っています。お墓を放置して無縁墓になっていることで、私たち自身の心のひっかかりがとれない、ということもありうるでしょう。
子や孫の代まで住む場所やライフスタイルを予測するのはむずかしい時代になりました。
そういう意味でも選択肢の一つとして「永代供養」を検討してみるのもよいのかもしれません。