近年、単身者や子のいない世帯の増加、高齢化社会に伴い、身寄りのない方の葬儀をどのように行うべきかについて悩んでいる人が増えています。元来、お葬式は故人の家族が執り行うものでしたが、故人に身寄りがいない場合、その方の葬儀は誰が行うのでしょうか?血族や親族でなくても喪主になることは可能なのでしょうか?
「自分の最期を仲の良かった友人にお願いしたいけど、できるのかな?」
「家族以外が葬儀を行える制度はないの?」
「そもそも喪主って誰が務めるべきなの?」
…などと、さまざまな不安や疑問が頭をよぎります。はたして、くわしく解説いたします。
親族でなくても喪主になれる
結論から先に言うと、親族でなくても葬儀の喪主を務めることは可能です。
ただし、ここでは「死亡届の届出人」と「葬儀の喪主」を分けて考える必要があります。
死亡届とは、その人が死亡したことを役所に届け出るための公的な書類のことです。
死亡届を提出することで、故人は戸籍から抹消され、埋火葬許可証が発行されます。つまり死亡届を出さないと葬儀ができないのです。死亡届の届出人は以下の人に限られます。
●同居の親族、その他の同居者、家主、地主、家屋管理人、土地管理人
●同居の親族以外の親族、後見人、保佐人、補助人、任意後見人、任意後見受任者
その上で、葬儀の喪主を知人や友人が務めることはなんら問題ありません。
親族も友人もいない場合は自治体が引き取る
親族と連絡が取れない、連絡が取れても引取を拒否された、親族に代わる友人や知人もいない。こうした場合、死亡地の自治体が引き取り、公費で火葬・埋葬を行うことになります。
もしも故人様がいくらかお金を持っていた場合(遺留金)、それが火葬や埋葬の費用に充当されます。
遺骨は自治体が一定期間管理をしますが、その後は「無縁墓」に合同埋葬されます。他の人の遺骨とひとまとめになってしまうので、仮に後から遺族や親族が現れたとしても返却は困難です。
こうした悲しい末路をとらないために、どうすればいいのでしょうか。
死後事務委任契約
知人や友人などが喪主を務めて葬儀を進めることは可能です。しかし、万が一トラブルにならないよう、「死後事務委任契約」を交わしていくことをおすすめします。
死後事務委任契約は二者間の契約ですから、特に正式な書式などがあるわけではありません。極端なことを言ってしまうと「口約束」でも構いません。
ただし、それだと万が一の時にトラブルになるおそれがありますので、公正証書にしておくことをおすすめします。こうしておくことで、第三者である公証人が二者間の契約の証人となってくれるのです。
葬儀信託や生前契約
葬儀信託とは、葬儀費用などを元気なうちに信託会社または代理店に預託し、死亡するまで信託会社が財産を管理する制度のことです。信託会社に預けたお金で葬儀費用だけでなく、介護や医療に対しての支払ができます。
本人が亡くなった時、死後事務委任契約を結んでいた人が、信託会社に対して支払を指示できます。死後事務委任契約は家族や親族に加え、友人や知人、さらには弁護士などが務めることが多いようです。
友人が喪主になるための手順
それでは、ここまでの話を踏まえて、血縁関係以外の人が喪主になるための手順を見てみましょう。ここでは分かりやすく、本人の友人に、喪主をお願いするケースで考えます。
まずは、葬儀の執行も含めた死後事務委任契約を結びます。この二者間の約束(契約)を目に見える形にし、かつ第三者の証人を置くために、公正証書にします。こうすることで、万が一あとから別の方から苦言を呈されたとしても、本人の意向に沿って喪主を務めたことの証明となり、友人を守ることにつながります。
そして、葬儀費用を確保しておくために、信託銀行にお金を預けておきます。本人が銀行にお金を預けておくことで、葬儀費用は友人のお財布からではなく、信託銀行に預けられたお金から支払われます。こうすることで、友人に金銭的な負担を強いなくて済みます。
遺産相続はできないが、遺贈はできる
故人の財産は、法定相続人に分割相続されます。法定相続人は、配偶者、子、孫、兄弟姉妹などの血族に限定され、友人は対象外です。
身寄りのない人の場合、相続されない遺産は国庫に入ることとなりますが、仲の良かった友人、お世話になった知人等に財産を譲る「遺贈」という制度があります。
遺贈をするには必ず遺言書が必須です。元気なうちに弁護士に相談しておくことをおすすめします。
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この記事を書いた人
株式会社AZUMA代表取締役
ご葬儀は、故人から遺された方たちへの最後のあいさつの場であり、そして贈り物です。そこに集う人々がこころゆくまでお別れができる葬儀を常に探究。コラムやYouTubeなどでも葬儀に関する解説などを積極的に配信しています。