災害が発生した時。葬儀は執り行える?

阪神大震災や東日本大震災のような大規模な災害が起きた時、葬儀を執り行うことはできるのでしょうか。いつやってきてもおかしくないさまざまな災害。たくさんの死者が見込まれる中で、どのように遺体の搬送や火葬が行われるのか。事前に知っておくことが大切です。

東京都広域火葬実施計画

1995年に起きた阪神大震災では、被災自治体の火葬能力の限界を超える数の人々がお亡くなりになり、「広域火葬計画」の必要性が叫ばれました。周辺自治体の火葬場も利用するということです。これを受けて東京都は1999年に「東京都広域火葬実施計画」を策定。その結果、東日本大震災によって亡くなった人の遺体を、被災地から都内の火葬場までピストン輸送し、都は579体の火葬協力をしました。最終改定は2013年に行われており、都と市区町村、さらには行政や民間団体とのスムーズな連携が求めれられ、市区町村に対しても大規模災害時の遺体の取り扱いのマニュアルの作成を促しています。

市区町村によるマニュアル 三鷹市の場合

大規模災害が発生した時の遺体の取り扱いや火葬のマニュアルは各市区町村によって作成されます。ここでは三鷹市を例に見ていきましょう。

三鷹市では、令和3年7月に「三鷹市地域防災計画」の改定を行いました。第6章「医療救護・保護等対策」の中に、遺体の取り扱い、検視・検案・身元確認、死亡届と火葬許可証の発行、そして火葬についてのマニュアルがまとめられています。詳しく解説していきます。

遺体の搬送

大規模災害が発生した時、三鷹市では遺体の搬送先を総合スポーツセンターに定めています。この中で、遺体の収容、検視検案、身元確認、一時保存を行います。遺体の搬送は、警察署、消防署、地域の消防団、市民や地域の支援班、さらには葬祭業者や搬送業者と連携しながら行います。なお、三鷹市と三鷹市葬祭業組合との間には「災害時における棺等の優先供給に関する協定書」を取り交わしています。

検視・検案

検視とは、事件性や身元確認のために行う遺体の外表検査のことで、通常は警察署や死亡場所で行われます。そして検案とは、監察医や警察医などが法医学の観点から遺体を診断し、死亡原因を確認するために行われます。こうした流れで、故人様の死因を特定し、死体検案書が発行されます。大規模災害時ではこうした検視や検案も総合スポーツセンター内で行う予定です。

火葬特例の適用・許可証の発行

通常の火葬では、市長が発行する火葬許可証が必要です。死亡診断書や死体検案書に併記されている死亡届を役所に提出し発行されるものです。

しかし、大規模災害時には迅速に火葬までを進めないと、公衆衛生上の問題が発生するおそれがあります。このため、遺体収容所(スポーツセンター)内にて「特例許可証」を交付できるよう、窓口を設置します。

火葬

三鷹市の場合、火葬は府中市にある日華多磨斎場を中心に行います。多磨斎場の状況によっては近隣の火葬場を利用することもあるでしょう。

身元不明者の確認

身元不明の遺体は、警視庁が編成する「身元確認班」によって確認作業が行われます。DNA 採取用器具等を活用し、効率的な証拠採取に努めますが、約2日間の確認作業でも身元が判明しない場合は、遺体と所持金品は三鷹市長に引き継がれます。

身元不明者については市民に対して周知しますが、一定期間(おおむね一週間程度)を経過しても身元が判明しない場合は火葬をし、遺骨と遺留品は市が管理します。

1年以内に引き取り人が現れない場合は、身元不明者として都の納骨堂に保管されます。
大規模災害の時には、通常通りの葬儀ができませんし、被災内容によってマニュアル通りに進まないことも想定されます。しかし、いつ何が起こるかわからない災害に対しての都や市の取り組みを把握しておくことは大切です。

この記事を読まれている方の中には、都民でない方、三鷹市民でない方もおられるでしょう。どうぞ、ご自身の自治体の災害時の火葬計画やマニュアルを調べてみてください。

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