葬式は一般参列者を呼ばずに、親族だけでひっそりと「家族葬」で行いたい。
最近はそういう方も増えています。
時代とともに葬儀形式も変化していますが、どのようなお葬式を行うのか、ご家族で話し合いましょう。
時代とともに変わる葬儀の形式
かつてのお葬式は、自宅を会場にしつらえ、近所や町内会の方がたくさん弔問に訪れる地域社会に根付いたものでした。
そのため、親族だけで執り行われる家族葬(や密葬)が行われることはまれでした。
以前は、家族葬を行うには特別な理由(故人が強く家族葬を希望した場合や、死亡理由に複雑な事情がある場合、亡くなった方が子どもや赤ちゃんなどの場合)があるときだけでした。
ですから、「家族葬」というと何か特殊な事情があるように感じられるため、「家族葬を選ぶなんて」と難色を示される方もおられるかもしれません。
しかし時代とともに葬儀の形式も変化しており、ご近所さんを中心とした、地域社会などで執り行ってきたものから、近年では葬儀社を中心とした葬儀が多くなってきています。
特に都市部では地方から上京した人など地縁のない人も多く、ご近所づきあいなども希薄になってきており、家族葬への傾向は顕著です。
家族葬をするときに注意しなければならない点
身内だけで行う小規模な家族葬が選ばれていますが、実際にはどのような点に注意しなければならないのでしょうか。そのポイントをまとめました。
●参列者の人数によって費用が変動する
参列者の人気によって費用が変動するので十分注意しましょう。家族葬とはいえ、その範囲は様々で、本当にごく近しい人たち数名で執り行う家族葬あれば、親戚には声をかけるため、30人や40人に膨れ上がるような家族葬もあります。葬儀社が提案する家族葬プランが安いと思っても、実際には費用が気にかかってしまうこともあります。
●呼ばないことでトラブルに発展することも
どこまでの人を呼んでどこまでの人を呼ばないかは悩ましいところです。葬儀に呼ばないことでトラブルに発展することもあります。どうして家族葬で行うのか、故人や喪主の思いをきちんと伝えましょう。特に大切な人に対しては事後報告ではなく、事前に直接お伝えする、あるいは会葬辞退の案内や訃報通知を送るのがマナーです。
●香典収入が見込めない
家族葬だから、安くお葬式を済ますことができると考える人も多くいるでしょう。それ自体は間違ってはいませんが、家族葬の場合、参列者がいないため、香典収入が見込めません。場合によっては、一般葬よりも高く費用がつくこともあります。
●自宅安置にすると近所の人に知れてしまう
ご遺体を自宅に連れて帰りたいと願う人は多くいますが、家族葬の場合、安置場所には十分注意を払わなければなりません。というのも自宅にご遺体をお連れする場合、葬儀社の搬送車両が横付けされますし、自宅の中からお線香の匂いや、おりんの音などがし、ご近所の人に知れてしまうリスクは極めて高いでしょう。家族葬の中でも、周りの人に知れてしまうのであれば良いですが、もしも誰にも知られずに、家族葬を行いたいのであれば、会館が保有する安置施設を利用しましょう。
故人の人柄や地域の習慣も考慮
「家族葬」に対し、一般の参列者も参列する旧来の葬儀を「一般葬」と呼びます。
一般葬に比べ、家族葬のほうが、ゆっくり故人とのお別れの時間を取ることができ、また葬儀の費用がおさえられる、という点も選ばれる理由となっているようです。
ただし、香典収入も少なくなるため、遺族側の負担額としては一般葬と同じ、もしくは多くなってしまう場合もあります。
迷う時はもう一度話し合う
家族葬か一般葬か、迷うことがあれば、ご遺族でもう一度話し合うとよいでしょう。
故人がご近所や地域社会との付き合いが深かったとか、住んでいた地域が昔ながらの互助会制度で一般葬を執り行うような風習がある、というのであれば、親族や家族、葬儀社と相談をして再考した方がいいかもしれません。
喪主や遺族の希望と、予算や日程の都合などを合わせ、故人の人柄や地域の慣習なども踏まえたうえで、納得のいく葬儀のかたちを選ぶことが大切です。
コロナ禍だからこそ増えている家族葬
コロナウイルスが社会に大きな影響を及ぼしている今、お葬式の形として家族葬が見直されています。県またぎでの移動も憚れる中、親戚が式場まで駆けつけることも控えられています。もちろん故人を送り出す最後の儀式ですから、故人を一目見たい、遺族を直接励ましたいと思う人もいるでしょう。しかし多くの人は、コロナウイルスに感染しないさせないために、小規模な葬儀を執り行っています。従来の一般葬から比べると、家族葬に反感を持つ人は一定数いましたが、コロナウイルスをきっかけにその理解はより広く得られるのではないでしょうか。
お葬式の本質は、亡き人に会いに行くこと、残された者同士がともに故人との別れを惜しむことにあると思います。さまざまな分野でテクノロジーを用いたリモートワークが注目されていますが、お葬式の現場でも、故人の弔いは家族だけで、社会的なお別れはリモートで、という日がやってくるのかもしれません。