故人の宗派が分からない!? 家族に聞いても意外と知らない仏教宗派の調べ方
知っているようで意外と知らないわが家の宗派。身内が亡くなって初めて「うちの宗派は何?」と気づくこともあります。
私たち葬儀社は、葬儀のお手伝いをさせていただく時に必ず家の宗派を確認しますが、「うちの宗派なんだっけ?」という言葉は日常茶飯事のように耳にします。
また、仏壇店の人の話では、葬儀を終えた直後にも関わらず、宗派が思い出せないおうちもあるとのことです。
宗派がわからない場合、どのような方法で調べれば良いのかをご紹介します。
親戚に聞く
まずは親戚を訊ねてみましょう。父方の兄弟姉妹や親戚に聞いてみましょう。仮に宗派が分からなくても、本家の菩提寺はどこなのか、あるいはお墓や仏壇はどこにあるのかなどの情報だけでも大きな前進です。なぜならば、そこまでたどり着くことであらかた宗派が判別できるからです。
菩提寺に聞く
菩提寺とは、代々に渡ってその家の死者や先祖の供養を行ってくれるお寺のことです。菩提寺が分かるのであればすぐに訊ねましょう。「うちのお寺は〇〇宗ですよ」とすぐに教えてくれます。もしも菩提寺が分からない、あるいは菩提寺がないのであれば、あらゆる方法を用いて宗派を調べなければなりません。
お墓に刻まれている文字を調べる
もしもお墓があるのなら足を運んでみましょう。まだお墓がないのであれば本家や親戚のお墓に行きます。お墓の形そのものは宗派によって決まっているわけではありませんが、そこに刻まれている文字には宗派別の特徴があるため、そこで判断します。
竿石とは、お墓の中心となる石のことですが、その正面には、多くの場合は「◯◯家之墓」と刻まれます。
しかし、その宗派を表す言葉を彫刻することも多々あり、それをもとに宗派を探し当てます。
- 「南無大師遍照金剛」だと真言宗
真言宗は弘法大師空海が開いた宗派で、空海は「お大師」さんの呼び名で親しまれています。「大師」の文字が空海を表しています。この文字が刻まれていれば、真言宗と確定できます。
- 「南無妙法蓮華経」だと日蓮宗かその分派
日蓮宗は日蓮が開いた宗派で、法華経というお経を大切にし、「南無妙法蓮華経」という題目を口に唱えます。ただし、日蓮宗は分派が多いため(法華宗、日蓮正宗など)、この竿石を見ただけではどの宗派かは確定できません。
- 「南無阿弥陀仏」だと浄土宗か浄土真宗
浄土宗や浄土真宗では「南無阿弥陀仏」の念仏を唱えて阿弥陀如来を信仰するので、もしも墓石にこの文字が刻まれていたら、このいずれかの宗派に絞り込めます。
- 「倶会一処」だと浄土真宗
浄土真宗が大切にする言葉に「倶会一処」というものがあり、念仏を信仰するものは亡くなると、先に亡くなった人と同じ浄土に行けるという意味です。この文字が刻まれていれば、浄土真宗と確定できます。
お墓や位牌に彫られている戒名で確認する
お墓や仏壇の中にある位牌にはご先祖様の戒名が刻まれています。
戒名も、宗派によって特徴がありますので、そこから宗派を見つけましょう。
<梵字で確認する>
梵字とはサンスクリット語のことで、一字で仏様を表すものです。
竿石正面や軸石に次の梵字を確認できたら、ある程度宗派を絞り込めます。
- 「ア」…真言宗か天台宗
- 「キリーク」…浄土宗
また、梵字ではありませんが、日蓮系の場合「妙法」という2字を使うことがあります。
<戒名で確認する>
お墓では、竿石の側面や戒名板にご先祖様の戒名を並べて刻みます。宗派によって戒名の様式も異なるので、そこから宗派を導きだすこともできます。
戒名の形の基本形は次のようになります。
男性だと(●●院)◯◯▲▲居士(あるいは信士)
女性だと(●●院)◯◯▲▲大姉(あるいは信女)
これを基本に各宗派の特徴を見ていきます。
- 浄土宗には「誉」の文字が入る場合があります。
男性だと(●●院)◯誉▲▲居士(あるいは信士)
女性だと(●●院)◯誉▲▲大姉(あるいは信女)
- 日蓮宗だと「日」の文字が入ります。
男性だと(●●院)◯◯日▲居士(あるいは信士)
女性だと(●●院)◯◯日▲大姉(あるいは信女)
- 浄土真宗の場合は位牌がなく、過去帳がある
浄土真宗では、先祖を礼拝の対象としないために位牌がありません。そのかわり、仏壇には「過去帳」と呼ばれる帳面が置かれます。また、浄土真宗では戒名とは呼ばずに「法名」と呼び、その形式も他の宗派の戒名とは大きく異なります。
男性だと(●●院)釋▲▲
女性だと(●●院)釋尼▲▲
お仏壇の本尊で判別する
お仏壇の中にはそれぞれの宗派が信仰の対象とするご本尊(仏様)が祀られています。
ご本尊は必ず3尊1組で祀られ、中央に中心となる仏様、左右に脇仏が掲げられます。
本尊は掛軸で祀ることもあれば仏像で祀ることもあります。
一目見ただけでは、その仏様がどの宗派のものか判別できないこともあるので、葬儀社や仏具店に相談するのがよいでしょう。
それぞれの宗派の本尊や特徴は、この記事の最後の表をご参考にしてください。
それでも宗派が分からない場合はどうしたらいい?
それでも宗派が分からない場合はどうすればいいのでしょうか?
そもそも宗派よりも大事なのは、菩提寺、つまりご先祖様の供養をしてくれているお寺の存在です。
もしもあなたが祭祀承継者、つまりご先祖様の供養を受け継がなければいけない立場であるならば、その菩提寺との付き合いをしなければなりません。
しかし、もしもあなたがそうでないならば、つまりお寺様との付き合いがこれから始まるのであれば、自分たちで宗派を決めればよいのです。
その時に、何を基準に宗派を決めればいいのか分からないという人もいます。
その時に一番の拠り所となるのが、本家や親戚の宗派にあわせるという方法です。
しかし、どのような方法を用いても宗派が割り出せないのであれば、葬儀社に相談して、自分たちが「これだ!」と思う宗派のお寺様に葬儀や仏事を依頼しましょう。