著名人の訃報の際に「密葬」という言葉を耳にしたことがありますか?
「密葬」とは一体どのようなお葬式なのでしょうか。
小規模な葬儀 さまざまな呼ばれ方
ひと昔前の葬儀では、家族や親族だけでなく、近所の人や会社関係、故人や遺族の友人や知人にも参列してもらって盛大に行われていました。
しかし、バブル景気の崩壊のころを境に、こうした風潮はなくなり、葬儀は小規模化していきます。集まるのは家族や親族だけ、さらには葬儀を一日で終えたり、火葬だけの「直葬」で済ます人が増加しています。
こうした風潮の中で、「密葬」と「家族葬」と「直葬」などの言葉を混同している人が多くいます。まずはそれらの違いを分かりやすく整理いたします。
「密葬」は、そのあとの本葬を前提としている
「密葬」とは、家族や身内だけで、ごく小規模で行う葬儀のことです。身内だけで行うという点では「家族葬」と似ています。ではなぜ二つの呼び方があるのでしょうか。
先に書きましたように、著名人の訃報の際に「密葬」という言葉を耳にすることがあります。
著名な方、社会的影響の大きい人の葬儀はそれだけ大規模になります。準備や訃報にも時間がかかりますし、滞りなく行われなければなりません。
ですから、故人が亡くなった直後は、まず身内だけで密葬で行います。そこでは、寺院にも来てもらい火葬までを済ませます。そして、のちにお世話になった方たちを招いて本葬を別に催します。密葬ですでに宗教儀礼を執り行っているため、本葬では宗教性を排した「お別れ会」の形式を執ることも多いです。
「家族葬」は家族や親族だけで執り行う葬儀
家族葬とは、文字通り家族や親族だけで執り行う葬儀のことです。
そこだけを切り取れば、密葬と家族葬は同じものですが、家族葬の場合はそれだけで完結され、一般の人たちのお別れの場所を特に設けません。
そのため、故人と付き合いのあった人などが、あとから自宅に弔問にやって来ることもあります。さらには事後報告に対して苦言を呈される可能性もあるでしょう。
お葬式をどのように執り行うかは、喪主や家族が決めればいいのですが、故人様を弔う権利は誰にでもあります。
もしも故人様が生前付き合いの多い人であったならば、家族葬ではなく一般葬にして、式場に参列してもらうのも一つの方法でしょう。
家族葬だからといって、必ず家族や親族だけで執り行わなければならないものでもありません。
中には、「お世話になったあの人だけ」とか、「これからも付き合いが続くご近所さんだけは」という形で、親族以外の人に訃報を流すケースもあります。このあたりは臨機応変に、柔軟に対応すればよいでしょう。
「直葬」の場合はお別れの時間が短い
「直葬」とは、通夜や葬儀などのセレモニーを執り行わずに、火葬だけをするスタイルの葬儀です。「火葬式」などとも呼ばれます。
決められた日時にあわせて、親族が火葬場に集まり、故人様の火葬を見届けます。
通夜や葬儀こそ行いませんが、寺院を招いて火葬炉の前で読経をしてもらうことはできます。
しかし、火葬場はあくまで公共施設であるため、読経の時間も5分程度と限られています。
費用面では少なくすみますが、お別れのための時間が短いので、後で悔やむことのないよう注意が必要です。親戚一同の理解を得られていないような場合には、のちほどトラブルになることも考えられるからです。
密葬、家族葬、直葬の違いを整理
ではここで、今一度「密葬」と「家族葬」と「直葬」の違いを整理しましょう。
- 「密葬」とは、家族や親族だけで執り行う葬儀で、後日の「本葬」を前提としている。
- 「家族葬」とは、家族や親族だけで執り行う葬儀で、それ以外の人たちのお別れの場がない。
- 「直葬」とは、通夜や葬儀を執り行わずに、火葬だけで済ます葬儀スタイルのこと。
悔いのないお見送りを
一般の人が行う「家族葬」タイプの密葬の場合でも、本葬の前に火葬まで済ませてしまうことが多いようです。もし、故人と対面してお別れをしたかったのに、という方がおられた場合など、のちに思いを残さないよう心がけたいものです。
また、たとえ著名人ではないとしても、身内以外にもお別れをしたい方も当然いらっしゃることでしょう。故人の遺志や環境に考慮して葬儀の方法を決め、悔いのない形でお見送りできるとよいですね。