転居や転職などに伴い、今のお墓へのお参りが困難になる場合があります。
そのような場合はお墓の引越しをすることもできるのです。
では、お墓の引越しにはどのような手順が必要なのでしょうか。
お墓の引越しにかかる費用は一般的に次のようなものです。
1.離壇料・閉眼供養の費用(檀家をやめる際に支払う料金)
「離檀(りだん)とは」、お寺の檀家をやめることで、その際にお寺の納めるお布施のことを「離檀料」といいます。お墓の引っ越しをすることでお寺との檀家関係を解消しなければならない場合は、離壇料を包みます。明確な料金が決まっていないことが多く、寺院に問い合わせるのがよいでしょう。
地域差やお寺の考え方によって細かい費用は異なりますが、大体10〜20万円ほどとなるようです。
また、「閉眼法要」とは、お墓を移すにあたりお墓から魂を抜くために行う法要です。墓石の中には仏様やご先祖様の魂が込められていると考えられ、こうした魂に一度墓石の中から外れてもらわなければ、石材店は解体工事に応じてくれません。解体工事に先立って、寺院に墓前まで来てもらって閉眼法要をしてもらいましょう。
費用は1~5万円でしょう。
また、お墓は「永代使用権」を買っているだけで、墓地そのものは自分のものではありません。そのため改葬の際にお墓を「転売」することはできないので気をつけましょう。
2.墓石の撤去費用
墓石の撤去工事は石材店に依頼します。
墓石を撤去するためには、いまあるお墓や石材を解体して、きれいに更地化しなければなりません。また、不要となった石材、コンクリートガラ、鉄筋などの金属もすべて分別して処分します。撤去工事にかかる費用は、墓地の面積や墓石の量や大きさなどによっても異なりますが、相場は30〜50万円ほどかかることが多いようです。
また、引越し先で墓石を新たに購入する場合には、古い墓石の撤去費用と、新たな墓石の購入費用のそれぞれが必要となります。あらかじめ方針を決めて見積もりを取り、無理のない予算計画を立てましょう。
3.墓石の運搬費用(新しい墓地で以前の墓石を使用する場合)
墓石を引越し先に運ぶ場合には運搬費用が必要です。
墓石をトラックに積み込む作業にも費用が発生する場合があるので移設工事と同じ業者に頼むのが安く済むようです。また、墓地によっては墓石の持ち込みが禁止されている場合や、施工業者が決められていることもありますので注意しましょう。
4.新しいお墓の費用(永代使用料、墓石工事費用)
お墓の引越しで一番お金がかかるのがこの場合です。
新たな墓地にお墓を建てるということは、まず新たな墓地を契約しなければなりません。墓地を公営にするか民間にするか、はたまた寺院の境内墓地にするかによっても金額が変わってきます。また、既存の墓石を移設して新たな墓地で据えなおすのか、あるいは新たに墓石も購入するのかにより費用が変動します。新規建立に比べると移設の方相対的に安いのですが、前の墓地と新しい墓地で、墓地の面積が違う場合、その墓地の寸法に沿った外柵や地盤工事をしなければなりません。
5.開眼法要の費用
墓石の工事が済むと、いよいよ遺骨を納めます。納骨式には寺院にも立ち会ってもらい、まずは墓石への開眼供養をして、その後、遺骨を納骨します。開眼供養でも、僧侶へのお布施と、お膳料やお車代なども必要です。
6.役所や寺院・霊園への手続き
お墓の引越しには、役所や寺院・霊園への手続きが必要です。
宗派や墓石のタイプなどによってどこでも引越しができるとは限りません。
たとえば、霊園によって墓石の寸法の条件が違ったりします。あるいは移設しようとする墓石が新しい霊園の区画に納まりきらないようなこともあるでしょう。受け入れ先の条件をよく確認しましょう。
お墓や遺骨を動かす前には必ず手続きを
新しい墓地が決まったら、霊園から「受入証明書」または「霊園使用許可証」など、その区画を使用してもいいことの証明になるものを受け取っておくようにします。
なぜなら、改葬許可証の発行のために必要となる大切な書類だからです。お墓の引っ越しやお骨の移動の際は、改葬元の自治体から改葬許可を得なければなりません。
そして「受入証明書」とあわせて改葬許可の際に必要なもう1つの書類が、改葬元の管理者が、たしかにそこにお骨が納骨されていたことを証明する「納骨証明書」です。
つまり役所は、前の墓地から新しい墓地へ、きちんと遺骨が引っ越しできる準備が整っていることを確認してはじめて改葬許可を出すのです。そのためには、新旧それぞれの墓地の管理者から証明書をもらわなければならないのです。
それを元の役所に提出して「改装許可証」を受け取り、新しいお墓のある自治体役所に提出すると、手続き上のお引越しが完了です。
費用面でも手続き面でも決して簡単な作業ではありませんが、身近なところで先祖を供養できるのはうれしいものですね。
手続きには本人が必ず行わなくてはならないものもありますが、そうでないものは代行してくれる司法書士会や弁護士会に相談するのもよいでしょう。