世界で一番信者の多い宗教はキリスト教、次がイスラム教と言われていますが、日本で行われるお葬式は仏式がほとんどです。
外国の方が日本でお葬式を行う場合の注意点を挙げてみましょう。
葬儀を行う側の注意点
外国の方が日本でお葬式を行う場合に注意すべき点として、手配する葬儀社が仏式以外のお葬式への対応が可能か、過去の実績などを事前に確認することです。
キリスト教は比較的メジャーなため、キリスト教専門の葬儀社もあります。その他の宗教の場合は宗教や信者さん、教会、モスク(礼拝堂)の関係者などに相談をするのがよいでしょう。
また、日本では遺体はほぼ火葬されます。
イスラム教など、土葬の習慣がある宗教の場合、許可を取らなければ埋葬できません。また、国内で土葬が可能な墓地というのも限られており、事前に墓地への確認が必要です。
葬儀に参列する側の注意点
参列者として注意すべきことは、儀式の流れなどの違いだけでなく、宗教によって死生観などがさまざまであると心得ておくことです。
例えば「イスラム教」では死ぬということは天国へ行く準備期間のようなもので、泣いたり悲しんだりするのはご法度です。
キリスト教も大きくは「キリスト教」とくくられますが、カトリック・プロテスタント・正教会といった宗派によって教義も違えば用語も異なります。
また、「お香典」は仏教独特のもので、宗教によっては金銭のやり取りのない場合もあります。
違う宗教の葬儀に参列する際、しきたりなどがわからないときは、同じ宗教の信者の人に相談し、先方にも確認をしておくと安心です。
キリスト教葬儀の特徴と注意点
キリスト教葬儀の割合は全体の約1%程度だと言われており、少数とはいえキリスト教葬儀への参列の可能性は十分にあるでしょう。
キリスト教の葬儀では、故人を拝み、死後の安寧を願うことはしません。
あくまでも故人の一生を導いた神への礼拝として行われます。
そして、遺族を慰め、自分自身の生と死を考えるきっかけとして捉えられています。
以下、キリスト教葬儀の特徴をまとめました。
- 葬儀の場所
カトリックの場合は教会で行われ、プロテスタントの場合は教会や葬儀式場で行われます。
カトリックは儀式に厳格なため、式場や斎場で葬儀を行うことはありません。
- 弔意の示し方は献花
仏式の葬儀では焼香をして弔意を示しますが、キリスト教では献花をします。順番になったら献花台まで進み、白い花を一輪受け取る、献花台に置きましょう。その後、祈りを捧げまがす、この時の作法に決まりはありません。自分が最も自然に行える形で祈りましょう。合掌でも構いません。
- アーメン
「アーメン」とはヘブライ語で「まことに」「たしかに」「その通り」の意味。祈りの最後に全員で唱えます。慣れない人は周りの人たちにあわせて唱えるとよいでしょう。
- 聖歌(讃美歌)
参列者全員で聖歌(讃美歌)を歌います。式次第に歌詞が印刷されているので、歌えそうであれば一緒に歌いましょう。
- 香典は「御花料」や「献花料」
御香典とは仏式での呼び名です。お香を使わずに献花で弔意を示すキリスト教では「御花料」や「献花料」と書いて金品を包みます。
イスラム教の葬儀の特徴と注意点
日本では約11万人が暮しているとされているムスリム。
日本社会ではなかなかイスラム教の葬儀に触れる機会がないかもしれません。筆者もイスラム教葬儀の施行や参列の経験がないのですが、可能な限り調べてみました。
- イスラム教の復活思想 火葬ではなく土葬
イスラム教の教えでは、死は生の終焉ではなく、現世の行いがそのまま反映された来世があり、アッラーの審判の日に再び甦ると信じられています。
復活するためには肉体が必要であるため、イスラム教では火葬を行わず、土葬をします。
- 日本のイスラム教徒 埋葬に関する2つの受難
日本におけるイスラム教徒の受難が、埋葬に対しての考え方です。
わが国の火葬率は99,99%だと言われています。ですから、土葬を受け入れる墓地が全国に数カ所しかありません。
また、イスラム教では死後24時間以内に土葬をしなければならないのですが、日本の法律では死後24時間は火葬や埋葬は許されません(蘇生の可能性があるため)。
- モスクを中心に葬儀をする
では実際にムスリムが亡くなったあと、どのように葬儀が行われるのでしょうか。
【遺体をモスクに搬送する】
病院などで死亡が確認されると所定の手続きを踏んだ後、遺体を搬送します。ムスリムの場合、モスクに遺体を移します。
【洗体とカファン】
息を引き取った故人は、すみやかにムスリムのボランティアや遺族によってきれいに清められます。その後、遺体を白い布で覆い、手と足を頭を縛ります。これをカファンと呼びます。
【墓地での埋葬】
洗体やカファンを終えた遺体はすみやかに埋葬地まで運ばれ、礼拝を行い、そして土葬にします。
ところが日本の場合は、24時間以内の火葬や埋葬は許されないため、防腐処理などして、24時間経過するのを待ちます。
その後、遺体をムスリム専用の墓地まで搬送して土葬します。
土葬の際、故人の頭はすべて聖地であるメッカの方を向け、小さな墓標を建てて埋葬します。