葬式は一般参列者を呼ばずに、親族だけでひっそりと「家族葬」で行いたい。
最近はそういう方も増えています。
時代とともに葬儀形式も変化していますが、どのようなお葬式を行うのか、ご家族で話し合いましょう。
時代とともに変わる葬儀の形式
かつてのお葬式は、自宅を会場にしつらえ、近所や町内会の方がたくさん弔問に訪れる地域社会に根付いたものでした。
そのため、親族だけで執り行われる家族葬(や密葬)が行われることはまれでした。
以前は、家族葬を行うには特別な理由(故人が強く家族葬を希望した場合や、死亡理由に複雑な事情がある場合、亡くなった方が子どもや赤ちゃんなどの場合)があるときだけでした。
ですから、「家族葬」というと何か特殊な事情があるように感じられるため、「家族葬を選ぶなんて」と難色を示される方もおられるかもしれません。
しかし時代とともに葬儀の形式も変化しており、ご近所さんを中心とした、地域社会などで執り行ってきたものから、近年では葬儀社を中心とした葬儀が多くなってきています。
特に都市部では地方から上京した人など地縁のない人も多く、ご近所づきあいなども希薄になってきており、家族葬への傾向は顕著です。
家族葬のメリットとデメリット
家族葬は、いまでは葬儀の一形態を越えて、葬儀のスタンダードスタイルになっているほどに定着しました。お葬式は家族や親族だけで行うものと考える人が当たり前になってきたということです。しかし、そもそもどんな人にも弔う権利があり、どんな人にも弔われる権利があるわけですから、家族葬はある意味では、人が人を弔い、弔われることの権利を制限しているとも言えます。だからこそ、トラブルが起こりやすいという側面もあります。家族葬のメリットとデメリットを考えてみましょう。
【家族葬のメリット】
- 落ち着いて故人様と向き合うことができる
家族葬にすると、参列者は家族や親族だけで、一般会葬者がいません。会葬者の対応に追われることも、場内が混雑することもありません。
- 葬儀の内容を比較的自由に決められる
周りの目を気にしなくてよいので、比較的自由に葬儀の内容を決められます。簡素なものでも、故人らしい個性的な葬儀でも、葬儀スタイルに制限がありません。
- 費用を抑えられ、予算計画が立てやすい
会葬者へのおもてなし費用が不要なので、費用を抑えることができます。また、おもてなし費用は数量が変動しがちな項目ですが、これらが不要であるために、事前にどれくらいの費用がかかるかの計画が立てやすくなります。
【家族葬のデメリット】
- 周囲から苦言を呈される
葬儀に声をかけてもらえなかった人から苦言を呈されることがあります。特に高齢で儀式を大切に考えている人、あるいは故人様に思い入れの強い人には丁寧な対応が求められます。
- 葬儀後の弔問の対応に追われる
葬儀後の事後報告、あるいは年末に送る年賀欠礼によってはじめて故人の死を知るケースが増えています。こうした人たちの中には「お線香だけでも」と自宅に弔問に来ることもあるでしょう。こうしたのちのちの弔問の対応は、そのつど行わなければならないために大きな負担としてのしかかります。
- 予想外に手間と費用が掛かる
家族葬には一般会葬者がいないために香典収入が見込めないという側面があります。また、事後報告やその際の個別の対応に余計な手間がかかることもしばしばです。通夜葬儀の場に参列してもらうからこそ、こうしたことを一度に済ますことができるのです。
故人の人柄や地域の習慣も考慮
「家族葬」に対し、一般の参列者も参列する旧来の葬儀を「一般葬」と呼びます。
一般葬に比べ、家族葬のほうが、ゆっくり故人とのお別れの時間を取ることができ、また葬儀の費用がおさえられる、という点も選ばれる理由となっているようです。
ただし、香典収入も少なくなるため、遺族側の負担額としては一般葬と同じ、もしくは多くなってしまう場合もあります。
弔問を辞退するときは、こちらの想いをきちんと伝える
家族葬にして弔問や香典を辞退する際には、くれぐれも相手の心証を損ねないようにしましょう。たしかに故人の供養は家族が行うものなので、葬儀の方向性は喪主や家族が決めるものです。しかし、さきほども触れたように、どんなに人にも弔う権利と弔われる権利があります。それを喪主や家族の都合によって制限するわけです。だからこそ、こちらの想いをきちんと伝えることが大切でしょう。
迷う時はもう一度話し合う
家族葬か一般葬か、迷うことがあれば、ご遺族でもう一度話し合うとよいでしょう。
故人がご近所や地域社会との付き合いが深かったとか、住んでいた地域が昔ながらの互助会制度で一般葬を執り行うような風習がある、というのであれば、親族や家族、葬儀社と相談をして再考した方がいいかもしれません。
喪主や遺族の希望と、予算や日程の都合などを合わせ、故人の人柄や地域の慣習なども踏まえたうえで、納得のいく葬儀のかたちを選ぶことが大切です。