老人ホームに身内を預ける時に、話しておかないといけないもしもの時の話

少子高齢化社会に伴って、老人ホームに入所する人が増えています。子ども世代は働くことに忙しく、満足に親世代を介護できないなど、さまざまなケースが考えられます。

しかし、老人ホームに預けたからといって、家族の体調や容体がいつ急変するかはだれにも分からないものです。だからこそ、老人ホームに入所している身内が危篤、あるいは逝去した時に、どのような対応をすべきか、事前にホームと家族との間で話し合いが行われていると安心です。

この記事では、老人ホームに身内を預ける時に、どのようなことを施設側と話し合っておくべきか、また、万が一ご逝去を迎えた時に、身内の方々がどのような対応をすべきかについて解説いたします。

「死亡の場所」の変化

厚生労働省『人口動態統計』によると、ここ数年、死亡の場所に大きな変化が出ているようです。これまで「病院」で亡くなる方が圧倒的多数でしたが、ここ数年で減少傾向にあります。これに対し、「自宅」で亡くなる人が微増、そして介護医療院、介護老人保健施設、老人ホームなどの「介護施設等」で亡くなる人が急増しているのです。

まだまだ少数派とはいえ、介護施設で最期を迎える人が増えているのは、少子高齢化にともない、医療や看取りの現場を「病院から、地域・自宅へ」という国の方針が早速目に見える形になっているからだと思われます。

緊急の連絡先

万が一の事態が発生した際に、施設がすぐに家族に連絡を取れるよう、緊急連絡先を明確に伝えておくことが重要です。代表者ひとりではなく、家族数名の連絡先を共有しておくことが望ましいです。また、その際の連絡方法(電話、メール、SMSなど)も決めておきましょう。

提携の医療機関の確認

老人ホームは介護施設です。そこで働く介護スタッフや看護師は、ある程度の医療行為はできますが、専門性を要する対応はできません。最近では、医師の配置が義務付けられている「介護医療院」が開設されていますが、まだまだ少数派です。
介護施設にもよりますが、通常、老人ホームはどこかの医療機関と提携しています。

どこの医療機関のサービスが受けられるのか、いざという時にどこの病院の医師が対応をしてくれるのか、事前に確認しておきましょう。

老人ホームでの看取りについて

老人ホームでの看取りの可否は、施設によって異なります。容体が急変したら病院に搬送されるのが常ですが、中には延命治療を放棄し、個人の意思で最後を迎えることを希望する人もいます(尊厳死)。
こうした希望に対して施設側が対応できるかどうかも、確認が必要です。
ちなみに「平成27年度介護報酬改定の効果検証及び調査研究に係る調査」(厚生労働省)によると、特別養護老人ホームの76.1%、老人保健施設の64.0%、介護療養型医療施設の81.9%が「終末期に入った入居者に対して看取りを行っている」のだそうです。老人ホームでの看取りは一般化されてきていると言えるでしょう。

施設での看取りを実施するには、医師、24時間対応のスタッフが必要ですし、さまざまな条件をクリアしなければなりません。
また、施設側との事前確認書や同意書、看取介護計画書などが交わされます。まわりに入居者がいる中での看取りですから、スタッフと家族が手を携えあうことが大切です。

施設での葬儀について

老人ホームによっては施設内で葬儀を執り行うところが徐々に増えてきています。ただしその内容はさまざまで、一般的な葬儀ができるところから、小規模のお別れ程度のもの、僧侶の読経を控えるなど、施設の方針によって制約があるようです。
老人ホームは居住空間でもありますから、施設の中でお亡くなりになる方がいると、まわりの入居者はその方を弔いたい、お見送りしたいと思うものです。ここが病院でのご逝去との大きな違いではないでしょうか。

家族としては、ホームで身内が亡くなった時にどのような対応をするべきかを事前にスタッフと話し合っておくことで、いざという時に慌ただしい思いをしなくて済むでしょう。

ご逝去されたら、すぐに葬儀社に連絡を

老人ホームで葬儀をするケースはごく一部で、多くの場合は家族が遺体を引き取り、自宅や葬儀会館などに故人さまを連れて帰ります。身内の方がご逝去を迎えたら、速やかに葬儀社に連絡して、お迎えの手配をしなければなりません。

元気なうちに葬儀社の事前相談を受けておくことで、万が一の時も落ち着いて対応できます。

また、施設に対しては、葬儀社がお迎えに来た時に、正面玄関から入っていいのか、個室まで来てもらうべきなのか、あるいは霊安室や専用の出入り口があるかなども、事前に確認しておきましょう。

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