お葬式のかたちはすっかり家族葬がスタンダードになりました。幅広く関係のあった人たちを招くのではなく、家族や親族だけで執り行う葬儀が人気を集めているのです。ここまで家族葬が選ばれるようになったのにはどのような理由があるのでしょうか。また、家族葬には、どのようなメリットとデメリットがあるのでしょうか。詳しく解説して参ります。
家族葬が選ばれる理由
家族葬が選ばれる理由にはたくさんありますが次の3点が挙げられます
- 親縁、地縁、社縁の希薄化
核家族社会になった現代は、家族や血族がバラバラに住むのが当たり前の時代です。また、近隣住民との結びつきも、昔に比べると希薄になっています。隣に誰が住んでいるのか知らないというケースも多いのではないでしょうか。さらにはひと昔前のような家族的経営の会社も見られなくなり、会社や職場の人どうしのつながりも弱まっています。こうしたさまざまな人間関係の希薄化により、喪主側も参列を辞退するようになり、家族葬が普及し始めたのです。
- 高齢化によって友人や知人の参列も困難
高齢化により、故人の友人や知人もまた高齢になっているケースが多く見られます。日本は長寿大国として知られ、平均寿命は男性が81.47歳、女性が87.57歳です(厚生労働省:2021年)。この年齢になってくると、故人の友人や知人もお亡くなりになっていたり、あるいは高齢で葬儀に参列できないというケースも少なくなく、必然的に、お葬式へのお参りが減少します。
- バブル崩壊後の景気低迷
バブルが崩壊したことがきっかけで、これまでのおがかりな葬儀は一転して小規模の葬儀へとシフトしていきました。無駄なおもてなしにお金をかけるよりも、故人のために、自分たちらしい葬儀にしようと、意識が変わっていったのです。費用を抑えるために家族葬というスタイルが選ばれていったのです。
家族葬のメリット
家族葬には次の3つのメリットがあります。
- ゆっくりと故人を見送れる
家族葬に集まるのは家族や親戚など、すでにつながりがある人ばかりです。従来のお葬式のように、参列者へのおもてなしに追われることがないため、ゆっくりと故人を見送ることができます。
- 要望に沿った内容で行える
友人知人、会社関係やご近所の方々など、一般参列者が当たり前の頃は、外から見られても恥ずかしくない立派な祭壇を用意したり、おもてなしの料理や返礼品を豪華なものにしたものでした。しかし、家族葬では、他者の目がないので、自分たちの要望に沿った内容で行えます。たとえば、祭壇をオリジナルのものにしたり、1日葬や無宗教葬などで執り行う人もいます。
- 香典返しの手間が省ける
参列者からの香典に対して、喪主は葬儀を終えて四十九日までに香典返しの準備をしなければなりません。葬儀はしなければならないことがたくさんあり、香典返しの手配は、喪主や遺族に大きな負担となっていました。しかし、参列者が少ない家族葬ではこうした負担を軽減することができます。
家族葬のデメリット
一方で、家族葬のデメリットには次の3つが考えられます。
- まわりから苦言を呈されることがある
葬儀は大切な方との最後のお別れの場です。喪主の判断で参列者を限定して家族葬を行うことで、「どうして葬儀に呼んでくれなかったの」と、招待されなかった方から苦言を呈されることがあります。とくに大切な親戚などには連絡をしておくようにしましょう。「この人には連絡すべきかどうか」と迷ったときには、連絡をしておくのが無難です。 - あとからの弔問の対応に追われる
家族葬を行った場合、関係者には事後報告を行うケースが多いのですが、あとから知った人たちが「せめてお線香だけでも」「お香典だけでも」と自宅にやってくることがあります。家族葬をすることで、葬儀自体はゆっくりとしたものになるかもしれませんが、その分葬儀後の弔問客への対応が、逆に遺族の負担になることもあります。故人が広い交友関係を持っていたのであれば、葬儀の時に参列者を招く方がよいこともあるでしょう。 - 香典がないため、思った以上に費用がかかる
参列者へのおもてなしがない分、家族葬は安く済むと思われるのですが、香典収入がない分、結果的に費用が安くならないこともあります。「小規模の家族葬=安い」という思い込みだけで判断するのではなく、まずはじっくり、自分たちのお葬式にどれくらいの費用がかかるのかを検証することが大切でしょう。
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