お葬式の現場では、多くの人が「柩の中に、故人様が愛用していたものや、送り出す側が想いを込めたものを一緒に入れてあげたい」と考えます。
遺体と一緒に埋葬するもの、あるいは柩の中に納めるもののことを「副葬品(ふくそうひん)」と呼び、古くから世界中で見られる風習です。
昔は土葬だったため、副葬品に制約はありませんでしたが、現代の日本ではほぼ100%の人が火葬のため、さまざまな理由から柩の中に入れられないものがあります。
この記事では、副葬品について、柩の中に納めてはいけないものについてご説明いたします。
昔から世界中で行われてきた副葬品
副葬品の慣習は、古くから世界中で見られます。人類共通の文化と言っても過言ではありません。
かつての日本もそうだったように、土葬は世界的に見て、今でも最も多く採用されている遺体の葬り方です。遺体に寄り添わせる形でさまざまな副葬品が土の中に納められました。食べ物や、故人が生前使用していたもの、草花なども含まれ、それらは遺体とともに土に還っていきます。
約5〜6万年前のネアンデルタール人がすでに葬儀を行っていたのではという学説はよく知られていますが、その根拠となったのが、埋葬跡から見つかった化石花粉です。花などが咲くことのない洞窟の奥深くに、まるで遺体に添えられるように、ノコギリソウやヤグルマギクなど数種類の花粉が大量に見つかったのです。これも副葬品のひとつと言えるでしょう。
エジプトのピラミッド、中国の秦の始皇帝陵、日本の古墳など、権力者の墓にはさまざまな財宝が一緒に埋葬されていますが、これも副葬品と言えます。秦の始皇帝は召使たちをかたどった人形をともに埋葬しましたし、似たようなものとして、日本の埴輪があります。
日本古来の副葬品 旅支度
それでは、日本の民間習俗ではどのような副葬品が死者とともに手向けられたのでしょうか。
たとえば、納棺の時に故人に着せる旅支度。現代の葬儀でも行われている日本独特の風習です。
旅支度とは、四十九日間の死後の旅の衣服である白衣を故人に着せることです。足には草履を、頭には編み笠を、手には杖を持たせ、三途の川の渡し賃として六文銭を持たせました。地域によっては、へその緒や配偶者の毛髪、着物や人形を入れていたようです。これらも副葬品の一種と言えるでしょう。
燃えるものに限られる現代の副葬品
火葬が主流の現代の日本では、副葬品は燃えるものに限られます。
いまも昔も、お花は故人を手向けるために最も多く用いられている副葬品です。祭壇に供えられたお花を切り取って柩の中に納める光景は多くの葬儀で見られます。華やかに故人を彩り、そして可燃性であること。お花が副葬品に選ばれる理由です。
その他にも故人が愛用していた衣服、故人への手紙、千羽鶴、愛読書、朱印帳や巡礼服などが挙げられます。
柩の中に入れてはいけないもの
現代の日本の火葬率は、99.99%だと言われています。
そのため、燃えないものを副葬品にすることが厳しく禁じられていますので、充分に注意しましょう。どのようなものが副葬品にできないのか、理由別に取り上げてみます。
〇公害の原因になる
ビニール製品、化繊の衣類、発泡スチロール、CDなど。
そもそも燃えにくいもの、有害物質を出してしまうものは柩の中に入れられません。
〇遺骨を汚してしまう
カン、ビン、ガラス製品など
これらのものもそもそも燃えるものではないので、いっしょに火葬するわけにはいきません。さらに厄介なのが、有害物質を出すだけではなく、高温加熱することでそれらが溶けて、遺骨を汚したり傷つけたりする恐れがあります。
〇火葬炉の故障の原因になる
テニスラケット、釣り竿、ゴルフクラブなどのカーボン製品、心臓のペースメーカーなど
カーボン製品は繊維が電極に巻き付いて火葬炉がショートして故障を起こします。また、ペースメーカーは爆発の恐れがあるために、必ず事前に火葬場職員に伝えておきましょう。
〇燃えにくいもの
大きなぬいぐるみ、辞書などの書籍など
燃えにくいものがあると火葬に時間がかかってしまいます。
お金や手紙を入れることはできない
死者に持たせるお金のことを「冥銭」と呼びます。日本では三途の川の渡し賃である「六文銭」が有名ですが、現在の日本では、お金を副葬品として納めることはできません。
なぜなら金属でできた硬貨は棺の中で燃え残ってしまう、あるいは溶けてしまうからです。また、紙幣を燃やしてしまうと貨幣損傷等取締法に触れ、処罰の対象となります。
ただ、一部の地域では六文銭の代わりとして十円玉を納めるところもあるようです。燃え残った硬貨はお守りとして家族が大切に持っておくのだそうです。
また、最近では六文銭の図柄を印刷したものを故人に持たせるのが一般化しています。旅支度を着せる中で、首から頭陀袋を下げ、その中に六文銭の印刷物を納めるのです。
手紙は納めても構わない
故人への手紙は棺の中に納めても構いません。想いを手紙にしたためて一緒に送り出して差し上げましょう。便箋やはがきに書いてもよいですし、ポストカードでも構いません。思い出の写真の裏側に書くという人もいます。1人で書いても構いませんし、複数の連名にしてもよいでしょう。
ただし、写真を納める場合は、生きている人の写っている写真は避けた方がよいとの考え方もあります。そこに映り込んでいる人も彼方の世界に引っ張られてしまうと考えられているようです。
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