風薫る季節になりましたね。
気候が良くなると、葬儀屋は一息つけることになるのですが、それでも、お葬儀はとぎれることはありません。
無常、ということなんでしょうか。
この季節に思い出されるのは、ご家族・お仲間思いであったあるスポーツマンの方のお葬儀です。
こちらが演出をあれやこれやと提案したわけではないのですが、ほんとうに参列されたお一人お一人の思いが伝わってくるようなお葬儀でした。
忘れられないお葬儀の一つです。
名人のお客様が多いと言いましたが、実は僕の中では、もっと心に残るご葬儀がいくつかあります。
いや、もっとそちらの方が忘れられないかもしれません。
それは、ある40代の働き盛りの男性のご葬儀でした。
家族思いで、ラグビー仲間の信頼も厚かった故人は、元気に出かけて行った仕事先で、突然脳溢血で倒れ亡くなりました。
遺された奥様とお子さんは予想だにしないことに、どんなに途方にくれた事でしょう。
しかし、多くの仲間たちが、訃報を聞いて駆けつけ、奥様を支えて、こまごましたことを世話役として担っていったのです。
ご葬儀には多くの参列者が集い、その一人ひとりのご様子から、仲間や職場の同僚に本当に頼られていたことが伝わってきました。
特に大掛かりな演出のご希望はありませんでしたが、唯一、ラガーシャツに仲間たちで寄せ書きをして棺に入れたい、とのお話がありました。
「向こうへ行っても頑張れよ」「ありがとう」・・・
びっしりと書き込まれたメッセージ。
棺の中にそれは納められ、一緒に煙となって昇って行きました。
ラガーマンだった故人を見送る素敵な演出でした。
ただ、もっと感動したのは精いっぱい故人のためにいいお葬儀をしたい、お見送りをしたいという御家族とお仲間の気持でした。
悲しみの中にいるご遺族に、演出の数々を強くお勧めすることは僕たちはしません。
(生前にご自身で葬儀の準備をされる場合はもちろん、積極的にアイデアを提案します!但し、結婚式ではないので、演出はほどほどに・・・と申し上げていますが。)
ただ、その人らしいご葬儀をしたい、という強いお気持ちには、最善を尽くしますし、さりげなく、実例をお話したりすることはあります。
いい葬儀をしたいというご遺族の心、僕にとってそれがなによりのモチベーションなんです。