神道のお葬式でお願いするのは、神主さん? 宮司さん? どっち?

日本での葬儀というと、仏式の葬式をイメージする方が多いようですが、そもそも「神道」は仏教よりも古くから日本に存在する宗教であり、私たち日本人の信仰心に根強く残っているものです。
では「神道」のお葬式でお願いするのは、神主さん、宮司さん、どちらなのでしょうか?

神社に務める人の呼び方

お寺のお葬式では「僧侶」が、教会では「牧師」や「神父」が葬儀を進行します。
では、神式ではどうなのでしょうか。

まず、神社に務める人について解説しておきましょう。
神社において日本固有の信仰にもとづいて祭詞をあげたり、お祓いをしたりといった儀式を行う人を、総称して「神職(しんしょく)」といいます。
これは職業としての分類名であると考えるとわかりやすいでしょう。一般の会社などで「営業職」「事務職」というのと同じ感じです。この「神職」のことを一般的には「神主(かんぬし)」と呼んでいるのです。

神職の職階

神職には職階があり、位の高い順に宮司(ぐうじ)、権宮司(ごんぐうじ)、禰宜(ねぎ)、権禰宜(ごんねぎ)などがあります。
神式で葬儀を進めるのは「宮司(ぐうじ)」です。
「宮司」は神社の代表で、どの神社にも代表宮司が一人おられます。その神社が行う宗教儀式に責任を持つ立場を指します。実際に葬儀の進行を行うのは「宮司」ですが、俗称でいうと「神主さん」でもあるのです。

神主(神職)になるためには

では神主とは、どのような人がなるのでしょうか。
お坊さんに比べると、神主になる道は狭き門のようです。

僧侶になるための大学や短大などが多数あるのに対し、一般の人が神主になるための進学先は、三重県の皇學館大学か東京都の國學院大学の二つのみです。
どちらかの大学で「神道」を学び、資格を取得すると階位を与えられます。
通信教育などもありますが、基本的には神社本庁の推薦を受けるほか、実家が神社であることが条件になるなど、非常に難関であるようです。

亡くなった人はその家の守護神となる

神道ではお葬式は「神葬祭(しんそうさい)」「神式葬儀」といいます。
神式の葬儀というと、皇室を思い浮かべる方もいるかもしれませんが、私たち一般人でも神葬祭を行うことはできます。
人が亡くなることを「帰幽(きゆう)」といい、亡くなった人はその家の守護神となって家を見守ってくれるという考え方です。

神道のお葬式はなじみがないように感じられがちですが、神社には初詣や七五三に詣でるように、日本人の生活に深く根ざしているといえるでしょう。

仏式葬儀と神葬祭 さまざまな違い

日本人の約8割が仏式で葬儀を行うと言われています。

多くの人は神道のお葬式に不慣れでしょう。

実際に参列してみると、葬儀社のスタッフが丁寧に案内してくれるので、さほど心配することはありませんが、事前に仏式との違いを知っておくと、これほど心強いことはありません。

代表的な仏式葬儀との違いをまとめました。

 

●線香はない。焼香ではなく玉串奉奠

神道のお葬式では、お線香を用いません。

また、香を焚くという意味では焼香も同様に仏式特有の作法ですが、神道ではこれも行ません。

神道のお葬式では「玉串奉奠(たまぐしほうてん)」を行います。

玉串というのは、榊に紙垂(しで)と呼ばれる紙を垂らしたものです。

これを祭壇の前に設えられた案(あん:神道で「机」の意味)の上に置いて弔意を表します。

 

●合掌ではなく、音を立てずに二礼二拍手一礼

さて、玉串奉奠では、案の上に玉串を置くだけではありません。

仏教では、焼香のあとに合掌をしますが、神道のお葬式では二礼二拍手一礼を行います。

まず2回礼をして、次に2回ほど柏手を打ち、最後に1回礼をするのです。

これは神社などに参拝する時と同じ作法ですが、唯一違うのは、葬儀の時は拍手の音を立ててはいけないということです。

音を立てずに、2回ほど拍手の所作を行います。

 

●神道の戒名は「諡号(おくりな)」

仏式では、死者に与えられる名前は戒名です(宗派によっては異なることもあります)。

男性であれば、「〇〇〇〇居士」や「〇〇〇〇信士」。

女性であれば、「〇〇〇〇大姉」や「〇〇〇〇信女」などが用いられます。

神道のお葬式では、戒名にあたるものは「諡号(おくりな)」と呼ばれます。

形式としては…

男性であれば「(生前の名前)+大人命(うしのみこと)」

たとえば、鈴木太郎さんが亡くなられた場合は、「鈴木太郎大人命」という具合です。

女性であれば「(生前の名前)+刀自命(とじのみこと)」

たとえば、佐藤花子さんが亡くなられた場合は、「佐藤花子刀自命」という具合です。

諡号は「大人命」「刀自命」だけでなく、亡くなった人の年齢などによってさまざまな種類があります。

●読経は祝詞

仏式の葬儀では、お寺様にお経を読みあげてもらいます。

神道では、宮司さんが読みあげるものを「祝詞(のりと)」と言います。

独特の節回しで読み上げられ、葬儀が進んでいきます。

 

●葬儀や法要はすべて「祭」

神道では、葬儀やそのあとに続く神事は、すべて「祭」です。

たとえば、通夜に相当するものは神道では「通夜祭」や「前夜祭」。

葬儀は「葬場祭」、火葬は「火葬祭」、遺骨を自宅に帰すことを「帰家祭」と呼びます。

また、その後に続く中陰法要や年忌法要(1周忌、三回忌など)は、神道では「霊祭」と呼びます。

神道では帰家祭以降、四十九日が該当するものが「五十日祭」、それ以降は「一年祭」「三年祭」「五年祭」「十年祭」と続きます。

仏式では三十三回忌が弔い上げですが、神道では「五十年祭」まで霊祭を続けます。

 

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